大牟田の狛犬(大牟田の石工 3)

2010-01


家内の故郷大牟田市には神社に置かれた狛犬がたくさんあり、
作風も非常にのびのびと自由ながらひとつの特徴というか流れを感じるものがあります。
そこで石工の名前の脇に刻まれた地名が解読できず難解で気になり始めました。
辿っていってみると石に刻み易くするためか、あるいは時代的にそのような字体が使われていたのか
その略字は正しくはこのような文字なのだという回答を見つけるところに辿りつきました。

狛犬の台座の彫刻から見つけた石工の故郷はここをクリックすると纏めています。

私が見て回った大牟田の狛犬をご覧ください。
大牟田市で一番古いといわれる教楽来(キョウラギ)天満神社の狛犬を基点として気儘に散策します。

大牟田市周辺の狛犬製作のルーツと思われる櫟野のすぐ隣村の教楽来に大牟田市最古の狛犬があり、
素材は櫟野の特産物の「櫟野石」で作られている。

従ってここが大牟田周辺の狛犬の故郷ではないかと推測いたします。


大牟田市最古の狛犬
教楽来(キョウラギ)天満神社

大牟田市教楽来1114



狛犬自体には製作年は書かれていませんが奉納をした大願主藤原秀行の刻銘、
さらに本殿に安置された
菅公像に寛正4年癸未・・・大旦那藤原武行・・・秀行が施主となっていることから
室町時代、寛正4年=1463年前後の作と推定されています。

東大寺山門の石造狛犬が日本最古と言われ、1190年代に、中国の石材で中国人によって作られています。

この時代、狛犬は神殿の襖絵から木像となり、ついで神社の随身門に安置されるに至り、
のちには境内の露天の台座の上に安置されるようになる過渡期であったと思います。

教楽来の石像も随身門の中に右大臣、左大臣の衛門と共に安置されたために風雨に曝されず
いまに姿を留めているのではないでしょうか。
2010年の現代から振返って
547年前に造られた狛犬は暗く頑丈な暗い格子の中に鎮座していますので
よほど目を凝らさないと見ることができませんが運よく撮影することができました。
格子の隙間は一眼レフカメラのレンズがやっと入るくらいの狭いものでしかも狛犬との距離も限られており
全身像を一度には撮れませんので脚部のみと分けて撮影しました。

   
1 吽                                                   2 阿


  
3 吽形ノ拡大



4 阿形ノ拡大



5 一度に写せないので足元だけの写真です。


教楽来天満神社の周辺を見張る狛犬

最初に見るのはこの教楽来天満神社、随身門の手前、二の鳥居下の後輩狛犬さん。
  


  
この狛犬さんは大正3年(1914)の銘


櫟野(イチノ)の諏訪社
福岡県大牟田市櫟野

教楽来天満神社から少し下った場所、このあたり一帯に石材を供給した「櫟野石(良質な凝灰岩)」の生産地です。

 
天明8年(1788)の銘があります。


  
目の高さから写していますので結構大きな狛犬です。
明治39年((1906)
ここが大牟田周辺の狛犬の発祥地です、石工銘にも「當村**」と刻まれています。


駛馬(ハヤメ)天満宮
福岡県大牟田市駛馬

西に下って大牟田市街です

この神社から下ってきた東側を見ますと万田坑の縦抗が近くに見えます。
    
明治40年(1907)


    
大正10年(1921)


諏訪神社
福岡県大牟田市諏訪町

三池港の近くまで下って諏訪川河口付近
  
大正11年(1922)(これは櫟野の狛犬ではないのではないかと思います)
ここは熊本県との県境、熊本玉名出身の人が奉納していますが玉名郡滑石という所の出身の方です。
玉名にも石材や石工は居りますのでそちらの生産かも知れません、恐ろしく風化が早いですね。


  

諏訪神社奥の狛犬 昭和50年(1975)
新しいのですが大正の狛犬が危機なので見かねての奉納かな?


田隈八幡神社
大牟田市田隈(銀水小学校隣)






明治24年(1891)



草木(クサギ)八幡神社
福岡県大牟田市草木902番
  



  

明治39年(1906)
ここには石灯籠の上に逆立ちをした狛犬さんもいます。


上内八幡宮
大牟田上内1631

  
明治36年(1903)


熊野八幡宮
大牟田市鳥塚町

ここは三笠神社と同じ高台に仲良く2社並んでいます。
三笠神社の狛犬さんは昭和の作で材質や作風から見て櫟野の作ではないようです。
三笠神社の宮司さんには狛犬の本の事で大変お世話になりました。

では熊野神社のほうを見てみましょう。

  

  
阿形の下に退役した狛犬さんが置かれています(上の狛犬さんとそっくりでしょ?)。
尻尾もありませんが新しいほうは顔が削げた退役の狛犬さんをそっくり再現しているようですね。
大正9年(1920)ということは古い狛犬さんは江戸時代でしょうね。



惜しいことに石工の名前あたりが崩れていますがおそらくは櫟野の石工であろうと推察します。


早馬神社
大牟田市宮部


少し住宅がある車が離合できない狭い路地の行き止まり。




随身門のあるお社です。
鳥居の大きく垂れた注連縄が特徴的。



 
兎に角巨大です。、携帯電話を右手のところに添えてみました。          吽のほうは子供を抱えています。


こんなに傾いていて大丈夫かな?
明治31年(1898)


岩本八幡神社
大牟田市岩本



無人の小さな社です。



  



  
明治14年(1881)


釈迦堂八幡神社
大牟田市岩本−釈迦堂





   
この素っ頓狂なお顔の狛犬さんも在郷軍人達の寄進で櫟野の石工さんが彫っています。

明治36年(1903)

数年前義兄の家のすぐ近くで散歩していてこの狛犬に出会ったのが疑問の始まりでした。

めぐりめぐって狛犬の故郷へたどり着きました。


大牟田の石工 狛犬の銘へのリンク

大牟田の石工2 早鐘眼鏡橋

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