Rembrandtと逢えた。
2015/04/1

私の出身地は熊本県熊本市です。
のちに判ったことですがその熊本市の我が家から100mぐらいしか離れていないところにカメラ修理の工房があったようです。
1953年6月26日熊本県は大水害が起きて熊本市内は殆んど床上1mとか2mの阿蘇火山灰土の濁流にのまれました。

何故水害の話が出るかと云いますと、熊本市で安武さんと久永さんという方が中判1眼レフの開発・試作をされていて
20台を製作準備されていた内の6台だけがその大水害から辛うじて救われたという話です。
そのカメラが
「Rembrandt」なのです。

1台は熊本で今でも息子さんがあとを継いで開業されている
「久永光機」に保存されています。

安武さんは上京して、残ったカメラを「武蔵野光機」へ持ち込んで商品化が決定し
「リトレック」と名を改めて世に姿をあらわしました。

http://mutohide.net/handmaid/remburandt-original.htm

その僅か6台しか製作されなかった残りの5台のうち1台が最近熊本の骨董屋に姿を現したようです。
熊本には二人の製造関係者がいてそのうちの一台は久永光機さんで現在も所在が明らかです。

そうなると安武さんが記念に残されていたのかあるいは親しい関係者に進呈されたのか?


それから暫くして何という巡り合わせか・・・巡り巡って私の手元に届いたのであります。

Rembrandtに憧れて下手な一眼レフを製作してRembrandt2と勝手に命名し、
後日、病に伏せっていた久永氏にお願いをして命名のお許しを得たのが恥ずかしい。

その本物のRembrandtが62年の時を経て僕の懐に今になって飛び込んできた。
僕は当時中学3年生でその水害の日、初めて自作した並四ラジヲを学校の理科室に置いて帰ってラジヲは水没した。

現物は非常に程度が良く専門家によるシャッター膜等の修復がされていて快適です。
ただ、撮影に使うにはピント位置がずれていたり光線漏れがあったりそれなりの手入れが必要でした。
おそらくもうフィルムを装填して使う事は無いという事で形の上で各機能を果たすようにされたものと思います。


中央にあるのが
「レンブラント」 左の物はジャンクだったのを軽量化した僕の手になる3号機、右端のはリトレックの輸出バージョン。





フィルムパックをあてがう位置にフェルトが綺麗に貼ってありましたがこれではだめなのです。





一寸わかりにくいと思いますが2o程の起毛をしたラシャ?にするとここからの光線引きはピタッと収まります。
その他暗箱底部にあったと思われる遮光バリヤが取り除かれていたのでシャッター膜の底から回り込む迷走光の影響が出そうなので製作しました。
実際にフィルムを入れて見るとあちらこちらからの光線曳きやシャッター幕速の斑などが1回ごとに発生しましたが
長年の休息から目覚めて、しかも試作機なのであちらこちらに名人技で取りあえずの対策をしたと思われるところがあります。

その他ピントグラス位置とフィルム面の光路の長さが3o近くもずれていたのでピントグラスボックスを
2mm持ち上げて残りはピント調整スクリューの調整で合致させました。
非常に優れた修理屋さんですがこんなのをいちいち撮影しては調整していたのでは商売あがったりですね。
こういう所はエンドユーザーがボチボチチューニングするところでしょう。

なおヘリコイドで調整する蛇腹部部分はオリジナルの物は盛大に光線漏れがありました。
以前大型カメラから剥がして保存していたヤンピーの出番で新調しましたが年代物の革なので全く違和感がありません。



Rembrandtの銘板が実に見事です。
それと蛇腹は作り変えたのですが違和感はないと思います。




堂々としてます。YKGというのは安武光学の略称だとおもいます。
そして後にも先にも銘板が金彩仕上げなものはこの一台しか見たことがありません。
久永光機さんの機体も金彩だったのかもしれませんが色があせて確認できません。
やはり
「安武さん」の特別の一台だったと思えてなりません。



スポーツファインダーもあります。




リトレックで売り出してからはフラッシュシンクロやスローシャッタなどが改善されていったようです。
内部の構造は時を経るごとに進化していっています、まさに試作機の最終版だと思います。



相当古いTMAX400、現像したらベースが茶色に変色していました。
装着されていたレンズはTessar 1:4.5 10.5p



昨夜の雨で半分散った名残の桜 2015年4月4日  PRESTO



新幹線、1/500ですが膜全体の速度が遅いので動体は苦手ですね。
右下辺りにモヤモヤしているのは菜の花です。


最後になりますがこのカメラを発見・入手してRembrandtと因縁深い私に送って頂いた心篤き方に深く感謝します。

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