UltraWide 8×10Handy Camera
2011/02/22


今回の製作はオーダーメイドのカメラ、つまり「奥のおあつらえ」と云う一作で御座います。

レンズと古いエイトバイテンのフレーム部分が送られてきて、ハンディーなカメラとして作って欲しいとの御注文でした。
支給レンズはFujiの120mm、これを
X-Yに±10mm程シフトするように、そしてフィルムバックはレボルビングではなく
縦横固定にしてCamera自体を振り回すという事でしてあとの御指定はありません。
レンズをあてがってみると辛うじてエイトバイテンサイズをカバーしているようです。
このレンズ、
35mm版で換算して見ると何と16mm相当の超広角度レンズなのです。

極限の広角レンズなので画面を辛うじてカバーしているだけで、煽れば当然蹴られが出ることは想像できます
まぁ、エイトバイテンというフレームサイズは少しトリミングしても
画面の収まりが良さそうなので蹴られるのは承知で加工してみる事に致します。



ここでは既に加工に入っていますが右側がレンズとともに送られてきた古いエイトバイテンのバックフレーム。
この写真ではアルミでX-Yシフト構造が加工に入っています、レンズ自体は取り外してあります。
フィルムを装填するバックとピントグラスは加工して使いますが四角いフレームは
レボルビングするための正方形なので小さく収めるため今回は使用いたしません。




2mmと4mmのアルミ板を主体に加工します。
最大寸法は縦横220mmにもなります。
レンズとヘリコイドはリンホフボードに組付けされていますのでそれを中心に
X-Yに15mmほどの動きを接続していくと220mm平方にもなってしまいました。
平板のスラスト加工なのであらゆるところからの光線のリークが最大の敵になります。
中央のプレートも既に縦横にテレンプを埋め込む溝を工作しています。




茶色いスリット状の所には毛足2mmのテレンプが埋め込まれています。
溝の深さは1.4mmで加工しまして0.6mmの毛足の出っ張りとなって光線の漏れを防止します。
既に組立済みのレンズボード側もこの様な加工が済んでいます。




木製ボデーの加工中ですが・・・でかいので棟上げでも始まりそうでしょ。
薄っぺらなBOX型になるので多少アクセントにもなるように両手で掴む段差を付けます。




既に塗装が始まった木部ですがレンズボードと面を接する部分は黒い毛糸で光線リークを防止しています。
ここは固定でスラストがありませんので深さ1mmの溝が一周しています、毛糸の遮光で充分です。
当然のことながらフィルム面との平行度とスパンはフライス盤で正確に割出し仕上げしています。




内部の細かい光線リーク防止構造はお見せしませんがテレンプの毛足を取り払って加工するところもあります。
左の茶色の部分が2mmの毛足ですが都合でこの毛足を毟り取りたい事もあるわけです。
その場合はブリキ板で保護したい面を覆い、毟り取る部分にガスバーナーの炎をサッと当てて
右側の黄色い蒸発した基部(約0.6mm)が作れます。




完成した正面
スラストはX-Y方向±12.5mm(span25mm)以上を確保できました。
ところでこのレンズは重量1kg以上もあり、しかもカメラの向きは縦横振替えして使われます。
そうなるとヤワなスラストですと自重で重力に負けてレンズ自体がズリ下がる危険性があります。
縦横振替ですからどちらが地球の方に向くかは決まらないのです。
そこでラックを駆動するX-Yのツマミに摩擦機構を組み込んでズリ落ち防止を試みました。




これが重量1kgのレンズのズリ落ちを防止するために内部に摩擦機構を組み込んだツマミです。
レンズを支えたスラスト面で抵抗を大きくするとラックとピニオンの間の抵抗が大きくなって
ギヤを頑丈にしないとトラブルが発生すると想像できます。

その点この機構ですとギヤとラック間にかかる負担が少ないのでモジュール0.3の目の細かいギヤでも無理がありません。
手持ちしていた強烈なスプリングを使い、外径は22mmでコンパクトに仕上げています。




無愛想な側面。




バックはレボルビングを止してカメラ自体を持ちかえます。
三脚穴も縦横に用意してありますがレンズが重たいのと薄っぺらなので横置きの時だけが自立できます。




重量のあるレンズが前方に突出しているので前倒しやすい。
横位置の時のベースに取っ手状の金具を付け安定させています。

仕様
レンズ FUJINON-SW S 1:8/120
シャッター SEIKO MXV 0番 プレフォーカス付き
B1〜500 
絞り 8〜64
焦点範囲 ∞〜最短2.2m(ヘリコイドが90mm用の為)
X-Y軸シフト ±12.5mm以上

幅310mm・高さ270mm・奥行185mm
重量 2700gr

閑話
エイトバイテンの一コマの面積は35mm版の面積の約60倍。
シャッター1回でライカ版60コマ分写すというのはなかなか豪快なものです。
で、この寫眞機の2700grを1/60にすると45grですから写す面積からみると超軽量なカメラだなぁ。

試写

水平垂直を出して12.5mmライズをかけていますので上にケラレが出ています。
上下角度80度・左右角度92度 対角角度106度
35mm版レンズ・16mm相当


efke PL100M Tropical
2004賞味期限切れ、常温保存



開業1週間前の博多駅-1



目の前を通る女性とは3mぐらいしか離れていないと思ったのですが。

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END