シノゴ・ワイドなRF機

2009/05/02

レンジファインダー式で、ポラロイド証明写真機のフレームを使い縦画面を主に使う。
レンズはトプコンのスーパートプコール105mmをあてがわれました。
おまけにレンジファインダー、距離計連動にするようにカラートの距離計ユニット添付。
所謂、特別に気ままな「ご注文カメラ」ですね。
ライズ機能はほしいとのことでレンジファインダーの精度が不安だし、
どこから手をつけたらいいのかまことに億劫なご依頼です。

ただし、完成させたら駄賃にスーパーアンギュロン47mmをくれるというエサのついた話です。

どうにも構想がまとまらずほったらかしていたところ、
別の友人から
69で55mmの2眼レフレンズを使ったワイドなカメラができないかとの相談を受けました。
これだと機構は単純ですのですぐに取り掛かり完成させたのが、先に完成した「Acacia-1」であります。
それを眺めているうちにお預かり品のスーパーアンギュロン47mmが目の前でチラチラ・・・

遂に魔がさして他人の持ち物に手を出してしまって、完成したのが「Acacia-2」

こうなるとRFシノゴを完成させないと窃盗犯になってしまうわけでして
やっとシノゴRF写真機の構想エンジンがスタートしました。
何事も欲に目が眩むといけませんですね(モライ乞食生活が永いなぁ)。

レンズとともにお預かりしたヘリコイドは如何にもでかくて鈍重、しかも軸長が長いので
内面で蹴られが発生し広角レンズ向きではありません。




それではと考えたのがペンタックス67のヘリコイドチューブでしたが加工してみると不都合があって断念。
結局上のヘリコイドをコンパクトに切り詰めてみることにしました。



真ん中のパトローネケースには分解したパーツが入っているだけで大まかに5個のパーツです。



上の写真の左下のチューブを9.6mm削ることができそうです。
脇のレンズボードも3mm厚さにしました。


距離指針の付いたテーパー部分も切り取ります。



トプコンのこのレンズ、あとで重大な欠陥が見つかりまして採用中止することになりました。
ばかでかい後ろ玉に騙されてイメージサークルは充分シノゴをカバーするとの
お話だったのが大間違い、69用だったので、画面が盛大に蹴られます。



ボデーがポラロイド用なのでレンズボードの寸法にも最初から制約があり
130mm角の中にこのでかいリングを挿入し、しかも上下スラストをさせて
ライズ機能を組み込まなければならないのです。



このスライドパーツには当然遮光も充分な機能が要求され、
スラストも軽くないと使いものになりませんのでライズ調整機構はかなり工夫しました。
0〜10mmライズさせるのに14回転つまみを回さなければなりませんが
そういえばこのライズ機構は大昔の蛇腹クラップカメラの常備品でしたね。



とりあえずな形になったところで先に書いた大問題に気がつきました。
トプコン105mmのイメージサークルが不足。
急遽ローデンストックの100mmへ変更。
ボデーの黒い部分も12mmほど再切断、ハンドルグリップの位置も後退。
フランジバックの調整は切削しては再組み立て、計測の繰り返しで忍耐が必要・・・。



いきなり距離計ですがカラートの距離計の軸長を30mmほど延ばしまして
(左上真鍮削りだし参照)この画面ではライズ機構が左の方向に10mm移動します。
これが正確に平行移動するようなチューニングが大変な工作です。
つまり、この距離計は前後軸スラスト移動のほかに上下スライド機構も要するのです。
誤差が発生しないように接触アームにはマイクロボールベアリングを付けています。
これで非常に滑らかに接触できます(現在∞位置)。
幸い支給品のカラート距離計は万能型でしたので旋回軸アームのスパンは3度の試行で完了。
ただ、カラート距離計の回転軸が片持ち軸なので軸芯がぶれるのが難点です。


これは最短1mまでヘリコイドが前進した場合の位置。
ヘリコイドから立ち上がる黒艶消しのL金具から真鍮のローラー当り金具までは
2mm真鍮材から造っていますのでかなり強固です。



保護カバーを付けて内部は完成。



距離刻印は旋盤で切り込みを入れて墨を注しています。
指標は1,3mの最短連動距離も書き込んでいます(最短撮影距離1m)。



ヘリコイドリングの一部に赤い矢印の金具を付けていますが
オリジナルヘリコイドを10mmも切り詰めた結果、
ヘリコイドリングが最短1mを超えても伸び出すので1mで規制しています。



完成前面、計算上ライカ版29mm相当ということで28mmだと思えば想像しやすいですね。



真横から(非常に薄っぺらです。
三脚座、ファインダーベース、距離計台座、いずれもテーパー修正を兼ねて
マホガニー材の積層ブロックで形成しています。


斜め後ろからなのですが・・・
ファインダーはグラフレックスの6枚ホルダー通称ガチャガチャの
曳き手の間から覗く格好でかろうじてセーフ。

フィルム4×5
レンズ Rodenstock Sironar-N 1:5.6 f=100mm MC
距離計 1,3m〜∞までの連動。
ヘリコイド 1m〜∞まで可動。
ライズ機構 センターから10mm上に移動。
重量 1.8kg(フィルムホルダーは除く)




1,3m距離計最短計測位置にて
エイトバイテンの期限切れ、efke ASA100を
シノゴに切ってASA25に見立てて撮影しました。
さらに現像時間を10%延長。




上の写真の部分拡大、ピントを合わせたのは手前の水のコック、
絞りは開放ですがf:5.6ですから被写界深度は深い。




噴水の先端



無限大(絞りはf=8)



上の写真の一部分(偵察機並みの解像度)

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END