イギリスの軍用機のビオゴン38mm f:4.5を調理する

僕のHPにふらりと現れて、とても珍しいレンズで美しい花の写真を撮られるKKさん。
KKさんのブログは
http://hanano-kaori.cocolog-nifty.com/blog/

さて、正月のお屠蘇が入った年始のご挨拶に妙な品物をご下賜くださいと
太平楽な戯言を書きましたら早速KKさんからの申し入れがありました。
なんと、例の高級ブランドカメラ、HASSELBLADSWCに使われていると言うビオゴン38mm
しかもそれはイギリスの軍用機にステレオカメラとして使われていたと言う曰くのあるレンズでした。

どうもハッセルのBiogon38mm f:4.5とは少し違っていてイメージ サークルは84mm
最大イメージ・サークルは87mmと言うことです。

レンズの鏡胴の構造が違うのでしょう(イメージサークルがでかいようです)

一番違うのはシャッターが電磁ソレノイド2個で構成されていてそのままでは動かないこと・・・・
このレンズを取り出してゼロ番シャッターに組み替えると言う名人がアメリカにいらっしゃったそうですが
2003年にその生涯を閉じて、今は誰も後を引き継ぐ人が居ないようです。
その人の手によって蘇えったビオゴンの写真をご覧ください。

(この写真はあるアメリカのHPの画像の転載です)
kkさんが調べてくださいました。

僕もボロボロの旋盤は持っていますがとてもそのような高度な工作は出来ません。

なお、この偉大な名人の追悼の記事がありましたのであわせてお知らせいたします。

http://www.sheldonbrown.org/steve-grimes.html

さて、私にはそのような高度な工作技術は有りませんが昔取った杵柄で電気回路の設計なら何とかなりそうです。
オリジナルな電磁ソレノイドをそのまま生かして何とかやってみようかと食指がうごめきます。
電磁ソレノイドを調べてみますと約12V・2Aの電圧電流でバチンと駆動することがわかります。
ソレノイドは左右に2個セットされていてS3,S4と書込みがありますのでステレオカメラのS1、s2と言うのも
ペアを組んで横にあったのでしょうね。
時代はまだ真空管で駆動した時代だったのか定かでは有りません。


これが当家に届いたビオゴンです。
ソレノイドの両端のサイズが16cmです。



シャッターと絞りを覗いてみましょう、レコードジャケットを下敷きにしたので見辛いと思いますが左が円形絞り。
右側がシャッター羽根(4枚構成)でレバーが右側に出て上下のソレノイドでON-OFFする仕掛け。



早速手持ち部品で試験回路作成。
オホホと言うべきか悲しむべきか・・・全ての部品は我が手元のデッドストック品。
これで商売になるとすぐ金が飛び込んでくるのですが・・・
いやいや、さもしいことは言いますまい。全て過去のしがらみ、南無。
今こうやって即座にお遊びが出来る幸せに浸りましょう。

最初はニッカド電池を10個ほど直列に接続してと思いましたが嵩張りますので一計を案じました。
12V2Aどころか30V-5Aを食わせて高速化しよう。
種明かしをしますとコンデンサーに30Vを充電し、それを瞬時放電させようと言う算段です。
ストロボと同じ考えですから別に目新しいことではありませんが容量に限りがありますので
ソレノイドに大電流を流し続けて焼損などという心配もありません。
こうするとソレノイドを焼損することもなく数十ミリ秒で放電は終了します。
電源も数秒かかって充電しておけば後はほとんど流れません。
チャージするコンデンサーはプリント基板上写真では紺色の横並びの筒2個です。

試作基板は平面的に作りましたのでかなりな面積を使っています。
これを実用的なコンパクトさに収めてみようと別に新しく基板を作りました。
ICを逆立ちさせてお腹にコンデンサーや抵抗を貼り付けたりあの手この手で小さくまとめますので
先ず修理は非常に困難になりますね。



30A電流容量のあるFET半導体素子も放熱の必用がないので上半分を切り取っています。
(上の黒いキャラメル風のもの)


回路は割りと簡単で555というICが主役で一番左の555でS3ソレノイドを叩くのです。
その直後に1/1000〜2秒までの時間巾を変化できる12段回路も555です。
その設定時間が終わったらソレノイドS4を叩いて一行程完了となります。
電源は006P電池1個で済ませています。
30Vの高圧はDC-DCコンバータで構成しました。

とても口では表せないと言うか未熟なもので理由を説明できませんが1/1000と1/500は不成功でした。
実験解析で1/500はいけそうな気がしますがそこまで努力をするのも疲れました。



左上が006P電池ですから残りのパーツのサイズが想像できると思います。
右下の基板は既製品で8〜15V入力で出力30VのDC-DCコンバータ。
あと、時間設定ロータリーSWがありますね。



話が飛躍しますが大きなツノをふり立てていますのでヘリコイドは直進でないと困ったことになります。
それと、レンズ後端から17mmのところがフィルム面と言う窮屈さのために
ヘリコイドはグラフレックスXL(だったと思います)のヘリコイドの一部が転がっていたので
これを改造してかろうじて直進ヘリコイドの形態を構成しました。
フィルムパックはこれまた手元にあったトプコンの古い69ホルダーを使っています。



時間を設定するロータリーSWとCRパーツははみ出したので絶縁のためにパトローネに
詰め込んだらこれがぴったり。♪♪##



左右がソレノイドで上から降りているのがシャッターレバーです。
下側から変な形をしたブリキのようなひげが見えますね。
これは0.1mmの燐青銅板で作ったメカニカル、フリップ・フロップ装置です。
シャッターレバーは住所不定でふらふらしていますのでこれで収まる位置を決めてやっています。
こうすることによってS3-S4のソレノイドは一瞬動作するだけでよいわけです。



高速側シャッターは昔のミノルタV2か何かにあった1/1000シャッターみたいに全開しませんが
規定時間より長く開くのでダメですね。
1/250から低速側ではOKです。



ぶれていますがレンズ金具後端とフィルム面までは約17mmしか有りません。



正面



後面


左横


右横




鏡胴の文字の中で一番上の行、左側ににつぶれた矢印が見えますか?
これがロイヤル・エアー・フォースだったかな?英国空軍の目印ですね。
出来上がった形もなんとなくきな臭い形になってしまいました。残念。
まるで武器のような形になってしまった。



プロフィール
ファインダーはルサール(旧ソ連)の20mm用。
実際は35mm版で18mm相当の視野角です。
レンズ ビオゴン38mm f:4.5〜32
シャッター1/1000・1/500・1/250・1/125・1/60・1/30・1/15・1/8・1/4・1/21/1・2/1
ただし1/1000と1/500は動作不良。
ヘリコイド ∞〜0.5m
水準器を上にセットしました、底蓋を掛け金で開閉できるように作り変え電池交換時に工具無しで操作出来ます。
フィルムサイズ6×9ですが周辺ケラレが発生するので方形画角は6×7かな?
と、いうことで67マスクを取り付けました(パーマセルテープで半固定)
重量2000gr

希少なレンズを提供してくださったkkさんに深く感謝いたします。
なおレンズの入手が今月6日、試写してみたのが24日ですから18日間での製作時間でした。


とりあえずの試写。




長崎県、池島炭鉱1



長崎県、池島炭鉱2(67にトリミング)

END

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