小西六・パーレット-ウオーレンサック付の蛇腹交換
2004/09/06
友人から蛇腹が壊れてしまったパーレットの修理依頼を受けました。
既にパッチを当てて済む状態ではなくなっていますので、今度は裏側の素材をなるべく生かして修復して見ました。
毎回工程や手法を変えていますのでこれが最高の手法とかではなく、ひとつの手法としてご覧下さい。
ぱっくりと口を開けた蛇腹。
このカメラの取り出し方ですが、フイルム装填サイドの反対側の側壁に2個のビスがあるので(この写真の左側)
取り外し、外装と中子の隙間に大きなマイナスねじ回しを差し込んでぐるりとひねると右側にずれますので
中子全体を横に引き抜きます。
左側壁に外したねじ2本が乗っていますね。
中央は抜き出した中子です。
このあと、レンズ固定ねじを内側から緩めて蛇腹を抜き取ります。
抜き取った蛇腹の前後の金具は大切にします、糊やカスを丁寧にとって変形も修正しておきます。
オリジナルの蛇腹を畳んで計測すると約6mmの厚さです、これは勾配が強いと重なりがずれるので有利なのです。
本体の懐は12mmもありますので充分ですね。
今回裏の布張りを残して重ね張りをするのも厚さに余裕があるからです。
内張りとなる紙(ハーレムブラックと云う商品名の薄くて光を通さない紙です)の上に壊れた蛇腹を展開します。
本物はここは薄手の絹(ゴースと云う奴でしょうか)で貼ってありますね。
表の革を残したまま、1面ずつ木工ボンドで張りました。
乾燥する前、接着剤で多少湿った状態で表の革をナイフの背中でこさぎ落とします。
つまり、芯になる矢紙を初期状態の間隔で裏紙にセッテイングしているわけです。
すでに完全風化状態の革ですのでぼろぼろと崩れます。
矢紙がなくなっているところはケント紙で補います(オレンジ色の部分)。
出来上がったらぐるりと筒に仮止めして折り目癖を付けます。
終わったらまた展開します。
仮に筒にしていたのを外して平らに展開し、両面テープを適当に張ります。
間違ってもコーナー部分は糊付けしてはいけません。
コーナー部は柔軟性を必要としますからね。
それと、万一ピンホールが出来ても裏紙との間に空間があるため直接光線漏れを引き起こす確率は非常に低いと思います。
ここに、ヤンピー(本物の小羊の革、0.2mm)を貼りますが仕上がりの下側になる位置で端っこ同士を重ねて仕上げます。
前後にレンズ部金具と、基部金具をボンドG17で接着して余計なはみ出しを修正しておきます。
この部分は接着剤との戦いですのでデジカメで撮るのを忘れてしまいました。
完成して記念撮影です。
文章には書きにくいのですがボデー基部のカシメは製造時の事しか考えてないので
ニッパーやドライバーなどあらゆる道具を使ってこじったりひねったり、かなりな努力を強いられます。
ついでにこのカメラはレンズ位置は固定(固定焦点)で、ほぼ10m〜無限大にピントが来るようにしてあります。
この写真で右に開いているファインダーフレームの中央のレンズは僅かに凸レンズにしてありますので、
近距離撮影の際はファインダーフレームを折りたたむとコンバージョンレンズとなってほぼ1,5mに合焦します。
ウオーレンサックのレンズは3枚構成ですので写りが楽しみです。
とりあえずの試写
台風が近づいている無限大ですがどこと無くピントが合っていません。
ASA400 1/100 f:22と16の間。
10〜20mの距離。なんとなく中央が濃いですね、両脇はすこし光線漏れがあるのかもしれません。
コンバーターを付けて(ファインダーフレーム装着の凸レンズ)。
水道の蛇口が1.5mはなれたところです。
これは水面まで約1.2mぐらいだったかなぁ
END