ベルクハイルそっくりの9×12ハンドカメラを距離計連動にする

                                                                              2004/08/28


 素晴らしい工作のカメラなのですが無銘なのです。

只今、オーナーさまからのご連絡でこのカメラはウエルタ912(WELTA912)であると教えていただきました。

おそらくは70年以上以前に作られたと思われる品物ですが全てがピカピカの状態なのです。

 この機体、わけあって私のところに転がり込んでまいりました。
私にこの機体を御下賜下さった前のオーナーさまは既にフイルムの供給が途絶えたキャビネ半裁版を
現行のシノゴに変換する工作を施していらっしゃいました。

 その方は、これをレンジファインダー、つまり距離計連動カメラに改造する段階でアイデアが尽きたか、
はたまた興味の中心が別の方に向いてしまって後の工夫は「お前に任せた!」となったのでありましょうか。

 装着されたレンこのレンズはシュナイダー・クセナー(Xenar)f:4.5 F=13.5cm
非常にきれいな状態でしたが、ホコリをとったり工作上の都合で分解しました。
普通クセナーはシュナイダー社のテッサータイプと云う認識が世間に広まっていますがある雑誌に50mmf:2.8の
クセナーに4群5枚の物を発見したとの報告を聞いていましたのでHeNeレーザーを当てて見ると・・・
これまた別の組み合わせ、3群5枚の構成であることがわかりました。

 おそらくメーカーとしてはテッサータイプの変形であるとの認識からクセナーを名乗ったのであろうと思いますが
ある意味奥ゆかしいと言うか、真摯なメーカーの姿勢がうかがえる気もしました。
それとも新規の命名をするほどではないとの判断か?

そう言えばライツのズミタールやズミクロンも頻繁に構成を変更していますね。
したがって、***と云うレンズは・・・と云うときに年式も考慮しないとおかしなことになるのでしょうかねぇ。



テッサーですと最前のレンズは1枚構成で、最後部のレンズの対物側は平面ですね。
この画はイメージです。曲面や間隔はこの通りではありません。



これが完成したシノゴレンジファインダー(しかも1眼式)
距離計の連動にステンレスワイヤーの細線をつかっています。

折りたたんでしまうときもステンレスワイヤーは何の苦も無く畳みこめます。
このワイヤー式距離計のヒントは先日工作した
http://mutohide.ddo.jp/reconst/nettix.html
つまり、このHPの改造カメラの二つ手前のテナックスの工作で出現した
糸を引いて距離を合わせる所から出発しています。


ファインダーはオランダのCAMBO社のMINIPORTRAITについていたカールツアイス設計の距離計を失敬。
これも、上記ボデーの提供者さまの御下賜品。

  
距離計のアームに追加レバーを半田付け。
この部分のアクションは横移動になりますので90度向きを変える必要があります。
つまり、距離計側では今が無限大側、右に振れると近距離側です。
実際はレンズボードは無限大側がこの写真での上側、近距離側では下に引っ張られるのです。
そこで小さなプーリーを作って直角にアクションを角度変更するのです。
都合の良いことに距離計の内部でスプリング作用で無限大側に常時テンションがかかっています。

                                      
プーリーを介してステンレス細線で前に引き出します。   
ツアイス社レンジファインダーのブライトフレームマスク部を作り変えてシノゴパララックス補正付ファインダーマスクを工作。
これで、距離計とビューファインダーは一体となり速写性能が上がります。 
     
                  



前オーナー様が加工されたシノゴバック部の完成の姿です。
ここはポラロイド社の証明寫眞機用の国際規格バック取付金具を付けてありますので
6枚連写のグラフマチックやシノゴポラパックを取り付ける事が出来ます。

ファインダーの窓を大きくして距離計としてだけではなく、
パララックス自動補正機能つきビューファインダーの機能も持たせています。


折りたたんだときはどうなるか?



夕暮れ迫る家の前での試写。
無限大に合わせたf:8程度の絞り値((4.5-6.3-9-12.5-18-25-36の旧式の絞り値)です。
ただし、「4,5」を起点にすれば全く現行の「1」を起点にした絞りの考え方と同じです。


中央部の(多分ライカ版程度の)パートです。
やはり無限大側にピントが来ていると思います。


むさい顔ですがモデルの志願者がいません。
1,5m離れたところでf:4,5 開放です。


何度もスミマセン。
部分拡大です。

こうして見るとシュナイダー社のこのクセナーは同じ時期のゲルツのドグマーと一脈合い通じる
カリッとした写りを目指したレンズのような気がします。

とりあえず、古典カメラが連動距離計を装着すると言う試験は一応成功と思います。

END

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