Biogon CCD角度制御カメラ
(CCDレンズ光軸正対制御方式)
2013-1-1
これまでにも数台製作してきたCCDラインセンサー・スキャナーカメラの新顔です。
今回はイギリス空軍の飛行機に搭載されていたBiogon38mm/f4.5専用機です。
このBiogonは2007年に「KK」さんから頂いたレンズです。
このレンズは自作の電子シャッター式にして使っていたのですが昨年落下事故で木っ端みじんに壊れたのを
一旦修理はしたものの不具合が多くなったのでシャッターを取り外して軽量化し
スキャナーカメラとして再度奉公させる事にしました。
なおシャッター機構を取り外したところレンズ本体は何と140grも軽量化しました。
35mmカメラでは23mmに相当する広角になるのですがこれをデジタル化するとCCDラインセンサーには
大変不都合な倍率収差というものが悪さをして画像の周辺部で色の滲み現象が起きるのです。
このあたりの事に関しては私が師匠と尊敬している「YAKU」さんの手記がありまして
それを克服するべくCCD角度制御カメラを開発し、おそらく世界初に発表されました。
レンズ側で発生する収差には対策が出来ませんがCCD素子の性質で斜め入射に弱い点は解決出来ます。
当然私の製作は2番煎じですが先達の苦心を辿りながら自分はいかに手を抜いていくかという
ボケ防止のお遊びでお茶を濁している点をご寛容願いたいと思います。
では徹底して金を使わない、工作加工精度に自信がないのでなるべくイージーな工作が主眼であります。
またハッセルのビオゴンとはマウント構造が違います、
幸い組付けたヘリコイドとCCDとの空間が大きいので工作が楽でした。
これまでに制作したスキャナーカメラ3兄弟です。
左がブロニカ用レンズ交換式1号機
中央はブロニカ・マガジンバック式2号機
右端が今回製作したBIOGON38mm専用CCD角度制御式3号機
CCD回路部分は例によってEPSONの GT-S630を利用しています。
CCD基板のLED照明回路部分は切り捨てています。
まず、リニアガイドレールは新品で購入すると大変高価なので、
昔のノートパソコンに挿着するCD・DVDドライバーのジャンクがあったのでこれをバラして、
それに付いている数センチメートルスパンの3mmのガイドシャフト(今回は約60mmのスパンが必要です)は
ステンレスの磨きシャフトを用いて約60mmストロークに伸ばしました。
3mmのステンレス棒ならDIYの店にお安く販売しています。
DVDのセンサー部分は捨ててしまってスライドガイド機構だけを利用します。
シャフトが3mmだったので幸いでした。
CCDその他の回路パーツはEPSON GT-S630をバラします。
上から斜めに半分以下に割れた歯車を付けたアルミ材が見えますがこれがCCD基板を搭載するベースです。
このベースがセンサーの移動に対応して旋回し、入射光軸となるべく正対しようとする機構です。
スライドガイド部に伝達歯車が見えますがアルミの溝を切ったシャフトを糸ドライブします。
このプーリーの直径の変更で制御角度はアナロガスに自在に調整できます。
この歯車は模型店で販売している射出成型の安物ですが
バックラッシュ防止のキックスプリングとセンサー基板と制御基板を連結しているフラットリボン線の
普段なら迷惑なバネテンションにも手伝ってもらってバックラッシュを防ぎました。
CCDのスイングは約60mmのスパンの間に最大80度位の旋回を必要とします。
その動力として糸掛けしたプーリーのローラーを回転させて歯車に伝達することにしました。
偶々80年程前の並四ラジオを修理したところでしたのでそのラジオのダイアル糸掛けからヒントを得ました。
なお、次の写真では糸のプーリーエッジ部は円弧を描くように作り変えています。
三味線糸がなかったので台所からローストビーフを縛るタコ糸?を失敬。
CCDセンサー基板を組み込んだスタート位置です。
中央に進むとセンサーは正面に来る光軸に正対します。
最前進した位置ではこのように傾きます。
これでどの位置にあっても38mmの広角レンズの光軸におよそ正対します。
ここで非常に重要な事はガラス封止されたセンサーのCCD素子表面位置と旋回軸心が
正確に合致していないとスキャン位置によってレンズ面との距離誤差が発生します。
なおCCDの保護ガラス面と素子面の位置関係はピッタリ1mmでした。
これは顕微鏡にダイヤルゲージをセットして焦点面とガラス表面を検査して測定しました。
後部の蓋をはずしたところ
外装はジャカルタ在住の友人ペンネーム「サムスル」さんから頂いた貴重なマホガニーを少し着色して仕上げたものです。
今回最大の出費かもしれない、12個も購入したNi-MH電池も最初から組み込んでいます。
なおバッテリーの接続タブは自作スポット溶接機を使いますが高価なニッケルリボンは使わずに
安価なステンレスの薄板を裁断して使いました。
赤い矢印、上側のはEPSONのスキャナーIF基板から移動したスタート位置センサー(フォトカプラー)
下側の矢印はCCDのキャリブレーション用LEDの点灯制御SWです。
ガイドレールを取りだしたDVDドライバーから頂戴したマイクロスイッチです。
6個のLEDアレイはCCDの左脇に斜めに接着しています。
先述した「YAKU」さんの試作機に真っ赤な塗装バージョンがありましたので色まで真似ています。
スタートボタン-PL-キャリブレーション・レベル調整VRがあります。
USB と電源ジャック。
レコードのターンテーブル上、完成したCCD角度制御スキャナーカメラ、
14cm×15cmと締まりの悪い寸法になりました。
W=150mm・H=140mm・D=165mm 総重量=1.95kg
試写
電池内蔵なので外で試写すれば良いようなものですが寒さと悪天候続きで、例によって書斎の窓際からの光景です。
手っ取り早く高速の400万画素でスキャンしたものを圧縮した物です、
スキャンニングが高速なので歩いている人も一応止まって見えます。
400
3600万画素弱で取込み(IR 84 赤外フィルター)、正面の若杉山辺りは雪で視界がありません。
上記赤外写真の丸印部分拡大(レベルとコントラストを調整しています)
最大1億4千万画素位まで解像して取り込めるのですが
レンズの性能や自分の工作精度等から勘案すると3000万画素辺りの解像度で良さそうな気がします。
日没直前のわが家の前の光景ですが黒い丸印の部分を下に拡大してみます。
14.039×10.200=143.197.800画素取込(約1億4千万画素)。
ソフトで画像の調整をしていますが、直線で15km先にある三郡山山頂のレーダードーム。
左側の3原色は手前を通過したトラックの痕跡。
これから本格的にCCDとレンズ面の平行度とかピント合わせなどをやらないといけません。
角度旋回軸の加工精度などが素人の情けなさでこれ以上どうすればいいのか・・・
問題が山積しているのですが「難しいなぁ」という事が判っただけでも成功の内?
追記(2013-1-19)
とりあえずのお披露目でした、一段落ついたので透視ファインダーと水準器を工作しました。
END
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