Idea・RF・67RollFilm Camera

IDEA(アイデア)というクラップカメラをレンジファインダー、ロールフィルムカメラに改造する
2014年7月16日

以前手作りカメラの先輩である岐阜の「YASUさま」が手作りカメラを引退するので譲るというお話で
後を託されて大量に頂戴したカメラやレンズ群の中にあったこのカメラ、
明治の終わりごろから大正、昭和初期まで乾版やシートフィルムの時代に流行したクラップカメラの中の一台です。

ロールフィルムの登場とスプリングカメラの登板で急速に姿を消していった寂しいカメラでもあります。

スプリングカメラの場合は前蓋を開くと蛇腹で繋がれたレンズ機構は自動的に撮影開始の位置にセットされます。
一方このクラップカメラは前蓋を開いてレールを所定の位置に固定した後にレンズボードを引っ張り出さねばなりません。
硝子乾版かシートフィルムを1撮影ごとに挿入しピント合わせは目測かフィルム位置に挿入したスリガラス像で決めます。

ところで「Idea」と命名されたこのカメラの国籍は何処でしょう?
大正から昭和にかけて日本の小西六がアイデアというクラップカメラを各種大量に製造販売していますが
このカメラにはどうも小西六らしい痕跡はどこにも見当たらないのです。
そしてドイツでも「Idea」というクラップカメラが存在したようなのです。

自分では失明に近いと思っていた目の不具合が白内障の手術と同時に施術して貰った網膜前幕除去ー硝子体交換という
術後になってみると寒気のするような難手術が見事に成功してなんと若かったころの視力を復活した喜び。
その喜びに励まされて先月RemburandtVを作りました。

今回も同じく既成カメラの模様替えというお茶濁しではありますが、ロールフィルムを使えること
レンジファインダーでパララックス補正もする、最短撮影距離を1.5mだったのを1mまで範囲を広げる。

どうせ1世紀近い古いカメラなので
トロピカル仕様にしてみる。
貴重な歴史遺産でしょうがどちらかというと影の薄い特徴に乏しい形態だと自己判断して大ナタを振るってみました。

これが「YASUさま」から頂いてたIdeaカメラ。
バックのピントグラスや名刺サイズのフィルムや乾版のホルダーも既にありません。
レンズはCarlZaissJena Tesser 1:4.5 105oとコンパ―シャッターが付いていて完動です。
もし、これが小西六製であったとすればレンズもシャッターも輸入品でボデー回りだけが国産だったのか?
日本が光学製品を世界に売り出す直前の幼少期の息吹だったのでしょうか。



まずはロールフィルムを使得るようにします。
沢山所有しているMAMIYA RB67のロールホルダーが使えないか検討します。
レンズ側に面するプラスチックボード(写真では右側です)は幅を左右各々1oほど狭くすればIdeaのスラストガイドに入ることが判りました。
この頃のカメラはまだ国際規格等がちゃんとしていなかった時期でやっとシャッターだけは「ゼ0番」が完成した時期です。
フィルムのサイズは決まってもフィルムパック類は各社まちまちの時代でした。
そういう不便さもこの手のカメラの影が薄くなった原因の一つかもしれませんね。
そしてアルミダイキャストの本体側金具の一部をフライス盤で3面を切削して無事作業を遂行できました。
左側の写真の両サイドと下部の白い部分が切削した部分です。
このホルダーはスライドして脱着可能でありますが予備ホルダーを作る事はないでしょう。




何か不明の35oカメラ用レンジファインダーが出てきました。
カメラについていないのでスパンが不明です。
木台にマイクロダイヤルを組み付けて無限大から1mまでのスパンを計測してみたら2.5oでした。
これを使って10.5pのテッサー、1m〜∞のスパンは約16mmですからクランクで動作を圧縮すればいいことが判ります。



Ideaの解体したもの
実にシンプルです。



スライドベッドの最後部に2oのシャフトをクランク状に突き出し、ろう付けします。




Ideaの側壁を破ります。
前蓋のヒンジ部分があるので補強を入れながらギリギリ限界まで削っています。




いきなり話は進展しますがフルスパンを確保するためタスキ金具のバネ材が切り取られたりスイングアームが作られたり
スイングアームの軸受けはパソコンの送風ファンから取り出したマイクロボールベアリングだったりします。
距離計のヘソを押す部分はラジコンのボールジョイントだったか?、とにかく我家にあるものはすべて役に立てます。
ボールジョイントの軸心からの圧縮比率計算値は約12.5oとなりましたのでそこを中心に前後スライドできる構造にしてスパンを調整します。

また、ロールホルダーが後方へ出っ張るのでファインダーも後退させるためこの写真左側にアルミ板をオーバーハング状に固定します。
そしてボデー側面に距離計クランクアームなどの機構を組み込むわけです。
マホガニーの8o板を刳りぬいて組み込みました(下の写真の下側茶色の部分)がボールジョイントの固定ネジだけが8oに収まらなかったので
出来上りでその部分に1.5oのアルミ板でコブを作り目隠ししました。



少し違う角度で写してみました。
A はファインダーベースで左右に移動できます。
B はボールジョイントの先のピアノ線カンチレバー、先端は丸めています。
M3のネジで繋がれていますので1回転0.5oストロークの微調整が出来ます。
C はアームの旋回軸受けマイクロボールベアリングです(パソコンの冷却ファンから取り出した)。
D はボールジョイントで軽金属製です(ラジコン用だったか?)。
E はストローク変換位置決定用のスライダーベースでアームの任意の位置に微動ロックできます。



またもや飛躍しますがパララックス補正つきのブライトフレームを工作します。
厚さ0.1oのリン青銅板を加工するのでけっこう大変です。
1oほどの真鍮板2枚の間にリン青銅板をサンドイッチして加工する部分の周辺をネジで締め付けて1体として工作機械に掛けます。
内側の遮光幕は手作業で作りますが白いブライトフレームは0.5oの幅にしました。



見苦しい写真ですが2枚の真鍮板に挟まれたリン青銅箔がサンドイッチされています。
4本のビスは2oΦで、窓のサイズは9.7×12.5oだったか?(6:7)
底まで貫通する必要はないので下側の真鍮材はまだ残っています。



大分進行しました。
皮を貼っていた部分は1oの窪みになっていますので1mm厚さのヒノキのシートを貼っています。
この上からマホガニー材を加工していきます、距離計機構は8oのマホガニーで囲っていますので
全体的にマホガニー仕上げは軽量化と相まって当然の成行きだと思います。



完成!
ストラップを通す金具も木材の厚さが増しているので新しく作っています。
ファインダーはかなりバックしていますのでボデーの一部が視野に入ります。
その部分はボデーを削って視野を確保し黒艶消し塗装の金属シートを貼っています。
ファインダー前方の小さな黒いでっぱりはボールジョイントの頭隠しです。



前板を下ろすと出てくるIdeaの銘板。



前板を下ろしたのちにレンズボードをレールまで引き出すのです。
左下側に距離計連動機構が顔を出しています。
連動アームは前板を折りこむと連携が外れて90°回転して畳み込まれます。



内部はウルシで朱色に塗りました。
ちょっとお稲荷さんの赤鳥居を連想しませんか?
(年寄りの我儘だから許されると思っていますw¥)



俯瞰したところ



ロールホルダー側を見る



後姿もリクエストがありました。



後姿を眺めるにはこの方が判りやすいかもしれません。




前蓋の左付け根側に直角に曲がったステンレスアームが顔を出しています。
これが距離計連動の仕掛けです。

このカメラを作るのに岐阜の「YASUさま」からボデーとロールパックを頂きました。
外装のマホガニ材を提供してくださったジャカルタの「サムスルさま」
そのほかいつも暖かく見守って声援を送ってくださる皆様に有難く深く感謝しています。


完成重量は
1006grとキリのいい1キログラムを6グラム超過する結果となりました。
67サイズで距離計もロールホルダーもついての重量ですから超軽量仕上げ成功だと思います。
あとで6gr肉抜きを思案してみます。

距離計連動範囲は1m〜∞、パララックス補正は多少不完全ですが近距離側で完全に合わせました。
全然違うファインダーの流用という事で図体の大きさが違うために構造上100%の動きは確保できません。
普段使う近距離側で調整したので非常に自己満足しています。
ファインダー倍率は0.7倍と少し不満もあります。
ハイアイポイントで撮影範囲外の周辺もよく見えてくれるので気持ちがいいです。


試写

パララックス補正の効果やRFのピント位置確認です。
フィルムは8年前に期限の切れたPROVIA400,の自家現像です。

ポジフィルムなのですが日没寸前でもありモノクロに近い感じです。
1:4.5 105o Carl Zeiss Jena Tesser
解放 1/100



Rolley Retro 400Sという期限切れのフィルム、薬剤の力が落ちているのかアンダーな仕上がり。
PC-TEA 11分/20℃  f:8 1・250 薄曇り
拡大すると無数の擦り傷があります(ネガ上で黒く出ています)
友人のCONANさまの秘密のアジトです、椅子はまた元通りにしておきました。



同じ撮影処理条件ですがシャッターはf11/250
パララックスの誤差を見るための撮影で上側はもう少し狭く写したつもりでした。
左右の誤差は感じません。


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