ウルトラワイドゴナナカメラの製作

ゴナナ(5×7インチ)ビューカメラのバックと思われるフレームとwide angle Dagor 3・5/8=92mmを送付けて
「これをハンドカメラとして使うためにレンズボードを作るべし」との大号令が発せられました(毎度お世話になっている大先生)。

wide angle Dagor 3・5/8にはこのような記載があります。
C.P. GOERZ AM. OPT. CO.
1886〜1902まではOptische Anstalt C.P.Goerz Berlin
1903からはOptische Anstalt C.P. AG. Berlinとなっているようです。
で、最後の方の文字がAM.になったのはいつの頃か手元に資料がありません。
いずれにしても相当古い時代のレンズでの超広角(35mmサイズ18mm相当程度)ですが
なかなかの性能を発揮しそうなレンズです。

検討してみるとなんとレンズボードのサイズは204mm角でフランジ部分の長さは約35mmという寸づまり。
それでいてゴナナの大判サイズでケラレがでてはいけないので旋盤加工等ですと恐ろしく突起の勾配がきついものになります。

そこで金属板で作ってみたら如何なものか?
ただしアルミニュームなどでは接着に困るので真鍮板で加工してみることにしました。
0.8mmの薄い真鍮板を主材にして前面のレンズボード部は1,5mmの厚い材料を使います。



先ずは正確なフランジバック(ヘリコイドからフィルム面までの寸法)を計測してみます。


今回はフジの組み合わせレンズフードと思われるジャンクリングを沢山いただいていましたのでこれを利用して計測してみました。
リングの組み合わせとそのねじ込み部の微調整で微妙な寸法まで再現できます。

計測して出てきた距離から割り出した寸法で先ずはCAD(パソコンの図面描きソフト)で作図してプリントしたものを
切り紙細工で模型化してみて様子を見てみます。

    
   裏に擦りガラスをあてがってフランジバック計測                 プリンター用紙に打ち出した紙での模型



    
 半田付けのために硝酸亜鉛を使うので赤くなります。                 裏には補強のリブを入れます。




フライス盤で平行を出したあとレンズ面に1,5mmの真鍮板を半田付け。
さらにフライス盤で平行度を仕上げます。それからバフ掛けするとだいぶ強度のあるような感じになります。



ボデー部分にあてがってレンズも装着した状態で無限大の時にわざと1,5mmほど厚みが不足するように
フライスで加工しておきます。
そのあとでレンズとボードの間にアルミニュームを旋盤加工したシムシート(1,2mm)を敷きこみ
さらにケント紙などで微調整して、ヘリコイドの無限大で焦点面が無限大になるように微調整します。
つまり、フランジバックが大きすぎると完全に無限大の出ない欠陥カメラになるからです(大は小を兼ねない)。
上の画面はシムシートの厚みがいくら必要なのかをダイヤルゲージで計測しているところで
目盛りとしては0,01mmまで計測できます。


    
         正面に山羊革を張りました。                  側面から見ると超薄型というのが分りますね。


ヘリコイドは1,5mから無限大まで調整できます。
お気付きかと思いますがレンズは中心より10mmライズしています。
つまり10mm上に平行移動していますので垂直に置いた時に上部の方を余計に写します。
カメラ自体は正方形みたいなものですからひっくり返せばフォールして下の方を余計写すことになります。
平行移動ですから鉛直面を合わせておけば建造物などの撮影時に上のほうを歪ませずに写す効用があります。



オマケにお下げをつけました。
矢印上から糸をたらし真鍮の錘を下げます。
これで鉛直と傾きが計測できます。


完成仕様
縦 225mm(突起物を除く)
横 235mm(突起物を除く)
奥行 120mm(レンズ先端まで)
重量 2,4kg
レンズ W/A Dagor f:8 3・5/8=92mm
f:8〜32
シャッターCOMPER T・B・1・1/2・1/5・1/10・1/25・1/50・1/100・1/250

ヘリコイド無限大〜1.5m
フィルムサイズ 5×7吋
ファインダーはアクセサリーシューに装着。
現状ファインダーはパララックス補正付



試写
スキャナーもシノゴまでしか対応しないので密着焼きをしてスキャナーで読み取りました。
画面は縁まで全部入れています。
ライズをかけているし四隅は少し蹴られます。


縦画面。
少し傾きましたが手すりの金具に押し付けての撮影で三脚など使っていないのです。
f:32 1/2秒


上の写真の中央部分拡大
これはフィルムからスキャンして、傾きを補正しています。





END

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