33×74mm パノラマ2眼レフ
2008/01/01
妙なフォーマットの、どのジャンルに入るのか判らないようなカメラが完成しました。
発端は以前製作した大したこともない35mm判のワイドカメラをプロの写真家さんに進呈したところ
以後会うたびにそれを不便そうにお使いになっておりました。
http://mutohide.ddo.jp/etccam/konicast-panoram.html
あまりにお気の毒で、失礼をしてしまったのでもっと改善をしたものにしたい、
第一、その目測機はレンズの距離目盛がヤード表示で、しかもファインダーがとても見辛いのでありました。
そこで2眼レフならば距離計連動ができる、ファインダー視野も広いのでこれと35mmフィルムを組み合わせたらどうだろう。
手持ちのパーツを眺めているうちにニコンのレントゲン撮影用の35oカメラボデーとフレクサレットが目につきました。
レントゲン撮影用のNIKONはシャッターもレンズもファインダーもないフィルム給送装置の塊りみたいなもので
以前高知のお医者様から頂いたものの利用しあぐねていた代物です。
フレクサレットはII型とV型の在庫、これもV型は確か浜松のお医者様から何かの修理駄賃にご喜捨頂いた代物かも。
貴重な資材をご提供頂きありがとうございました。
ところで、なぜターゲットボデーがフレクサレットなのか、少しご説明を致します。
フレクサレットのレンズ繰り出し機構はテイクレンズ鏡胴の直進ヘリコイドにビューレンズが繋がって前後します。
したがってレンズの鏡胴周りにすべてが収まっていますのでコンパクトで都合がよろしいのです。
ローライなどの一般的な2眼レフは両サイドのラックとピニオンギヤ駆動ですからボデーの両脇にその駆動装置が
組み込まれていまして、今回のようにボデーサイドを切りぬいて別のボデーを埋め込むと構成が困難になります。
フレクサレットの特徴的な距離調整機構の振り子式レバーはそのヘリコイドを廻しているためなのですね。
今回出来上がりのカメラの底の部分は10mmほどは削り取りましたが振り子式レバーの位置関係で
これ以上削り取るとレバーがオーバーハングしてしまうからなのです。
極端にいえばNIKONの底部から下は本当は要らないのですがあきらめました。
これで何とかならないかととりあえず下手なイメージスケッチをしてプロ写真家さんにご覧頂きます。
「こんなものを企画しているんですが、二人で共同開発しませんか?」
「うーん、なんだかよく判らないけど話に乗るか・・・」
「うまく出来上がったら買って下さい。」
「ヨッシャ・買ってやる」と仰ったかどうか・・・???
スポンサーを見つけ、うまく丸めこんだので2眼レフ本体は程度の良いフレクサレットVを使いますね。
、ビューファインダーレンズはII型のレンズ(f:3…V型はフレネル使うのでf:3,5と退化しています)を使う贅沢。
で、35mmフィルムの自動給送は当然36mm幅なのでこれを2度巻き上げで使うと72mm+駒間隙間=74mmのワイドになります。
そこへ共同開発者の写真家さんからとんでもない御下命。
「フィルムを目いっぱい使いたいのでパーフォレーションの隙間にも映像を写したい」
シマッタ!墓穴を掘った!
ただでさえ二駒分の長いトンネルゲートをさらに広げろとは…大丈夫かなぁ。
「メカのシロートはとんでもないこと思いつくからねぇ、作る方は大変なんだからぁ・・・」
と、ボヤいてもあとの祭りですが、これで非常に特徴的なカメラに仕上げることができたと、
今回もくろんだ共同開発による新構想の目的は十分に達成できたと思います。
つまりライカ版のフィルムでは24mmの窓を通して撮影するところを33mmまで9mmも広げる試みです。
さすがに片側に夫々1mmのふちを残さないとフィルムの平面度が保てません。
製作は、まずNIKONの幅を目いっぱい広げ、更に20mm広げること(合計74mm)。
続いてフレクサレットのボデーに喰い込ませることですね。
実はファインダー部分の構想は全く貧相な、ほとんど構想なしでスタートしておりまして
最後の最後までどうしたものかうまく思案がまとまりませんでした。
ファインダーの横幅はすでにオリジナルのフレクサレットボデー幅を超えています。
ミラーを後退させたので背丈だけはフレクサレットのオリジナルデザインよりも5mm沈下させることに成功しています。
フードカバーは真鍮板を切り刻んで銀蝋付けや半田付けしながら悪戦苦闘。
どうも板金細工は一生上達いたしませんが曲がりなりにもルーペまで内蔵することに成功しました。
製作記事はえてして単なるはた迷惑な自画自賛になり、
また今回のものは自作を試みる方にとってもさほどお役には立たないと思いますので
出来上がり御報告の後に追加記事としてご説明いたします。
ご興味のある方は追加記事をご覧くださいませ
(作者の下心としてはぜひそれも見てほしいのでありますが…)
フィルムはTYPE-135
撮影画角は33×74mm 36枚撮りで18コマ撮影
撮影面積33×74=2442mmsq
(66判だと52×52=2704mmsq)
35mmフィルム使うのですが撮影面積は中判サイズです。
巻き上げは自動停止2回クランク(小刻み巻き上げは不可)。
撮影レンズはMeopta Belar 3.5/80mm
ビューレンズはMeopta Anastigmat 1:3 f=80mm
重量 1.25kg
1 ファインダーフードを折りたたんだ状態
2 ファインダーフード引き起こし、蓋はのっぺらぼうなのでMeoptaのファインダーフードの一部を貼り付け
したがってフード正面の出っ張りは単なるおめかしです。
3 正面
4 正面 フード引き起こし
5 側面右(折りたたみフード左右壁は仮止めのためいまは歪んでいます)
ストラップ金具はマミヤC型の部品を加工。
6 側面左
巻戻し摘みはクランク式ではファインダーに引っ掛かるのでつまみ式にして製作。
7 ファインダー部、フレネル上側の赤い半透明ラインはパララックス表示
拡大ルーペはフレクサレットの流用折りたたみ式
フレネルはマミヤRB67のインテン式(フレネルと反対側にダイヤモンド状マット面なので明るい)
ファインダー視野幅は74mmありますので非常に広い。
したがってルーペを使った時、一度に全視野を見ることはまずできません→欠陥
とりあえずの試写
御近所の窯元の一角にて、フィルムはラッキーASA100
同じく 薪置場のマキに着生したキノコ、フィルムはFP4 ASA125
製作途中の資料です。
ここから先は御興味のある方だけどうぞ。
1 NIKON 35mm X-RAY camera 2 FLEXARET V
3 不要な部分を外しテープで仮止めして丸鋸で切断 4 左右に分断
5 折り返した切断面(意味はない) 6 左右に20mmクリアランスを付けて補強接続
7 空間を「デブコンA(商品名)で肉盛りの準備 8 デブコンA肉盛り中
外側を木材で囲うと硬化後削り取り易い。
9 肉盛りした後フライス盤で切削 10 裏蓋も20mm幅を広げる。
トンネルゲートの隙間を200ミクロンにする。
トンネルゲートの隙間はフィルムの厚さから見て150ミクロンなのでしょうが2コマ分のトンネル長になるので
巻き上げ抵抗が大き過ぎてはいけないとあえて0.05mm懐を深くしています。
ここの工作は圧板との当り面からフィルムゲートまですべて1回勝負で工作しなければならないので事を慎重に運びます。
11 圧板をアルミ板で制作、木材は仮止め冶具。 12 圧板の平面度を出すために金剛砂で水研ぎ
フライスで削ると保持金具で歪が出ます。
13 出来あがった圧板。
14 フレクサレットの切削、うまく固定するのが肝要。 15 前後組み合わせ開始(35mm側の真鍮接続金具に注意。
左右にも腕が出ます。
16 フレクサレットのフィルム室は半分切り取り 17 ミラーBOXは捨てて5mmバックした位置にミラー位置移動。
フィルム室と長ネジ穴のガイドで微調整3か所で位置決めする。
18 仮組み完了。位置関係確定後樹脂で固定。 19 画面幅が74mmもあるのでミラーの最大幅は75mmとなった。
ピントグラスはマミヤRB67パーツ流用 ストラップ金具はマミヤC型用を採用、ボデーと接続金具で繋ぐ
END
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