カール・ツァイスが誇った プロターレンズ
ドッペル・プロター(組合せプロター)
ツァイス・アナスチグマットは 196mm-F9がツァイス初のアナスチグマットとして1890年に完成されたということです。
設計者はどなたも御存知、テッサーの設計者ルドルフです。
のちにツァイス社、初のアナスチグマットということでプロターと命名されたとあります。
プロターにはいろんなシリーズが作られましたが「ドッペルプロター」は4枚張り合わせ単玉アナスチグマットを
向かい合わせに組み合わせたものでプロターVII、Aと呼ばれました。
2枚組み合わせることでレンズも明るくなり、たる型の歪曲収差を効果的に補正できたということです。
然る筆者の先生はプロターに関しては外国での製品を見かけたことがないのでテッサーなどと違って
カールツァイスが本家でしか生産しなかったと思うと書かれています。が・・・
さて、今私の手元にある組み合わせプロターは1個の鏡胴に絞りを配置して4枚のレンズを単体で使ったり、
2個組み合わせたりして10種類の焦点距離を実現できる万能レンズともいえます。
しかも製造メーカーはなんとアメリカのボシュロム社です。
1914年には世界第1次大戦が勃発しています。
世界情勢が不安定な中、商人たちは国の枠を超えてしたたかに商売をやっていたのではないかと想像をふくらませたり
一つのレンズを眺めているだけでもいろんなことに思いを馳せると一世紀の歴史の重さを感じます。
製造年ははっきりしませんが1895年のパテントの記載がありますので1900年前後のレンズと云えるでしょう。
つまり、珍品の部類に入るレンズであろうかと思いますが、それより1世紀を超える古のレンズはいかがな性能でしょうか?
添付された書類には「$197.50」と書いてありますので1世紀前の200ドルを想像しても今の貨幣価値では見当もつきませんね。
コーティング技術がなかった時代ですから4枚のレンズを張り合わせることで2面だけの反射で済ませるという手法で成功しています。
ドッペル=ドイツ語、英語=ダブル、この組み合わせですと4面反射になります。
レンズ構成です。
革ケースに収められたレンズ4枚と鏡筒、絞りリング類 左4個がレンズ、右上が鏡筒、下の2個のリングには
10種類の絞り目盛りが刻んであります。
書類のひとつ 11・3/16インチ〜16・1/8インチまでの焦点距離の組み合わせが記載されています。
それとシャッターと組み合わせた場合の価格も書いてありますが手元のレンズはシャッター無しです。
逆算すると217.50-197.50=20.00 つまり$20が3番コンパウンドシャッターの価格ということでしょうか?
シャッターはソルントンシャッターが一番に目に浮かびますがこれは幕速があまり可変できないので敬遠して
古い電子式コンパーシャッターEleectronic3を引っ張り出してきてレンズマウントフランジ部をシャッターの脇にタップを立てて
横3箇所から閉めることにしました。
こうするとマウントのネジ部がシャッターに組み込まれた形になりますので焦点距離を自由に組み替えることが出来ます。
このシャッターは4,5Vの水銀電池で動作するようになっていますが、貴重な水銀電池は1個しか残っていないので
今回は3Vのリチューム電池CR123Aとアルカリボタン電池、LR44を直列につなぎスペーサーを入れて使いました。
電池がないと機械シャッターによって1/60か1/125の単速シャッターになってしまいます。
電池が入るとなんと32秒から1/200秒までの広範囲なシャッター速度を選択できます。
今回の試験でも室内光でしたので3秒とか4秒の長時間露光を安心して使うことが出来ました。
3番シャッター直径10cm。如何にデッカイかご覧ください。 電池はいい加減な組み合わせ電池4,5Vです。
シャッターの中央の真鍮のリングがプロターのフランジナットです。
自作フィールドカメラに装着して撮影中。
カメラ本体の詳細はこちらにあります。
カメラは軽量なのですがレンズとシャッターが物凄い重量感です。
http://mutohide.ddo.jp/handmaid/45fild-camera.htm
試写
最短焦点距離組み合わせ No8
11・3/16インチ 薔薇の花 f:32 2〜3秒
11・3/16インチ これ・・・何の花? f:32 4秒
最長焦点距離組み合わせ No14
16 1/8 インチ f:45 シャッター速度確か1/2秒ぐらい。
16 1/8 インチ f:45 シャッター速度確か1/2秒ぐらい。
TOP
END