旧東ドイツのWERRA3(ウエラまたはヴェラ)
                                                 2003/11/

突然当家に転がり込んできたWERRA3型です。
このシリーズは1955年位にカール・ツアイス・イエナから世に送り出された35mmフイルムカメラです。
I,II、III、Wと進化して行ったカメラです。(型式は1,2,3のようですが判り易くする為 I、II、III、の記号を使いました)

基本外観は変わらないままにレンジファインダーとなりレンズ交換式ともなり、最後には露出計内蔵にまでなりました。
III型はレンズ交換式でレンジファインダーを内蔵しています。
初期型の設計時から距離計や、露出計の内蔵まで計算に入っていたカメラです。
かなり以前、5台ほどのジャンク・ウエラから2台を作ったことがありますが、どのバージョンも部品は互換性がありました。

今回のIII型を改めてながめて見ますと、フォクトレンダービテッサ風のネジ1本見せない軍艦部と共通のデザイン。
巻き上げは鏡胴基部の回転。
(ビテッサは煙突と呼ばれるシャッターボタン兼用のプッシュロッドがピョンと飛び出しましたね)
巻き戻しやカウンターは底部と徹底した美学を感じます。
僕の勝手な想像ですが100%ビテッサの設計者か関係者が設計陣に入っていると思います。

絶対人の真似はしない、何か新機構を考案する。
たとえそれが、世上でいかに評価されようと設計者の凛とした意思が貫かれた逸品であることには変わりありません。

本機には標準レンズしかついていませんでした。
レンズスペックはイエナ・テッサー50mm f:2.8 
シャッター1、2、4、8、15、30、60、125、250、750 特筆すべきは1/750の高速性能ですね。
たとえそれが本当に1/750ではなくても、シャッター機構の再設計の結果だろうと思います。
改めて敬意を表したいと思います。


1 レンズキャップを付けた状態。


2 キャップをはずして反対に付けるとフードになります。


手元に届いた状態は、シャッター速度不変、絞り羽根粘り、距離計の狂いの状況でした。
そこで、シャッター部をばらすことになりましたが、レンズ交換式でビファインドシャッター方式であり、
シャッター部を開くには後方から鏡胴をはずすことから始まります。


3 フイルム室からレンズ周りの4本のネジとレンズ周辺のリングをはずして鏡胴を取り外します。


4 シャッターチャージ、巻き上げリングはすぐに外れますので次に3本のビスを外して黒いベースを取り外します。
   右側に外しておいているのが巻き上げリングです。


5 シャッターユニットが取り出せます(これも落とし込んであるだけですぐに引き出せます)


6 前面側に薄い切り欠きのあるリングがあるので外します。
  コンパーシャッターなどはここは薄いネジとストッパーですが、薄さを稼いでいるのでしょう。


7 面倒ですがライトバリュー関係のリング類がいくつかあります。
  パラパラと外れます、


8 シャッターは最高速度1/750を出すためにか、あるいはレンズ交換式のオープン状態の
  光線漏れを防止するためか2重シャッター羽根です。
  前面が5枚羽根、後方が2枚羽根構造です。
  今右側にあるのがライトバリュー機構のためのリング類です。


9 給油完了のシャッターユニットをまたチャージリングの中に戻します。


10 再度組み込むための準備ですがチャージピンがフイルム巻上げカムの中に入ります。
   それと距離計連動ピンも位置合わせを必要とします。
   さらに、シャッターレリーズピンが本体から出ていますのでこれも位置関係を無理しないように
   挿入します。


11 今度は軍艦を外しますが、両サイドのストラップの基部のネジを外すと開きます。

   距離計は、ファインダーの中に35mmと50mm、100mmの3種のレンズのフレームを持った
   実像式の立派なファインダーです。
   距離計は中心部の一部に左右移動する窓があって上下分割像の合致であわせます。
   2重像合致式と違って上下の画像ずれを合わせるので確実ですが慣れが必要な気がします。
   パララックス補正は3焦点ファインダーですから自動ではありませんのでそれぞれのフレームに
   細いラインを入れて表示していますが、スナップでは使いにくいですね。

   大変明快ですが交換レンズ類のヘリコイドの移動量をピンで伝える方式ですからライカのように
   ローラーコロを使っていない欠点は出てくるものと思います。


12 ファインダーブロックをひっくり返した状態です。
   こんなところに調整ネジがあります。
   上向き矢印の先に微調整ネジがあります。


13 距離計の下にあるフイルムチャージ機構です。
   鏡胴のリングの回転を平行移動するノコギリに伝え。それを回転運動に変換しますが
   歯車が頑丈で、レチナのように壊れる心配は皆無です。


14 底部の写真です。
   巻き戻し、カウンター、開閉および巻き戻し時のスプロケットの解除をつかさどるダイアルがあり
   その中心は三脚座になるという合理性。