TSK Shutter の修理

亜哉さんという写真機仲間から送り込まれたTSK シャッターなのですが、
御本人が分解掃除をしていたら中の真鍮部品が折れてしまったので半田付けしてくださいとの要望。
「そんな小さいところは半田付けでは強度が出ないし銀ロウ付けになるし小物はトーチで吹っ飛ぶから大変だよ」
と、丁重にお断りしました。

この亜哉さんというのは実はれっきとした男性でとても柔和で優しく、しかもとてもいい男なんですが
東北人の粘り腰をしっかりと持った方ですよっ!

お断りした筈なのにしっかりと送りつけてくれましたっ!!

二つに折れた場所はスローガバナーの操作アームで、元の形がわからないので折れ口を顕微鏡で観察して推定します。
今度は小さな二つのパーツを陶芸の棚板の上でつき合わせて位置決めし、ガストーチの風圧で動かないように
固定をしたら極微量のフラックスを塗って銀ロー付けします。

やっと出来上がって組み合わせてみたら・・・シマッタ!
折れた傷口のササクレがはみ出したのでしょう、全体の長さが0.5mmほど長すぎる。


Aがロウ付けしたところ。
Bの位置のピンをスラストして受ける長穴がもっと右側にPINのサイズ位の長さ延びないといけません。
早速左右間にアーチを作って上に逃げたら「ヨシッOK」の筈だったのですが・・・
今度は上の蓋に干渉してノック・アウト!



溶接した場所は赤い矢印で右下側にアーチしているのは長さを短縮する姑息な手段。
これは失敗でしたので叩き伸ばして平面にし、長穴をダイヤモンドヤスリで広げることにします。



長穴を伸ばしてアーチで飛び出した部分を引っ込め平面に戻す。



これがShutterの中身全体。



完成して蓋を閉じました。
1秒が1/4ぐらいだとか不満はございましょうがこれが限界。

目の悪くなった年寄りにはいささか過酷な修理でございました。
老人は静かに好きなことをして余生を送りたいと願っております。

若い方がドンドン腕を磨いてこれから消え去っていく機械式銀塩カメラの整備に精通してくださいね。

END 
HOME