オールド・テッサーと出会った。


田舎住まいでとんと世間に疎い私ですが、不思議な巡り会わせで写真家の小林基行さんとご縁ができました。

で・・・小林さんから貴重な「ラルティーグ」の写真集とご本人の出版写真集「エバーグリーン」と
ポラロイドランドの120というカメラ、
さらにテッサー210mmまでも頂戴してしまいました。
このレンズとカメラは、小林さんが写される被写体を表現するのに
「これこそ・・・」との思い入れのあった品物だそうです。
「エバーグリーン」の15人の美しい高校生たちの姿をこのレンズで捉えることはできませんが
先ずはオールド・テッサーを通した光を眺めてみたい衝動が走ります。

ポラロイドはしばらく置いておくとして・・・
テッサーは付いているシャッターが経年変化でまともに動作しません。
シャッターの形式とレンズの製造番号からおそらく90年ぐらい前のレンズのようです。

シャッターの整備をしようとしてついうっかり絞り羽根のピンを破損してしまい、万事休す。
シャッターはフォーカルプレン・シャッタやレンズキャップで代用出来ますが絞りは壊すとえらいことになります。
分解して驚いたことに、絞りの素材はエボナイトなどの樹脂製のシートに真鍮ピンをカシメてあり半田付け不能。

幸いなことに完全に壊れて廃棄せずにほったらかしていたコンパウンドシャッターが同じ寸法でした。
レンズは割れてシャッターの中身は空っぽ、絞りだけが残っている状態なのです。
こちらの絞り羽根は定石通りスチールシートにカシメたもので頑丈そのもの。

オリジナルとは少し形状が違いましたが無事移植完了しました。
あとはシャッター機構がかなり使い込まれていて長年の間に素材が変形して
アルミの内壁に接触しながら動作して引っかかったりバネが弱っていたりで、給油だけでは駄目。
整形したり削ったりの試行錯誤で一応完全な状態に復元しました。

ところで其処まで使い込まれていながらレンズにはほとんど曇りも傷も見当たりません。
きっとプロが大切に使い込んできた品物だと思います。


大型ですからゆったりとしたスペースに仕組んであります。
右側のシャッターリングは組付け前に黒塗装を完了しています。


中央にばら撒いている半月形の絞り羽根が廃棄したオリジナルの羽根です。
セルロイドかエボナイトのような樹脂素材にカーボンを吹き付けてあるようです。
当時としてはアルミニュームや樹脂というのは時代最先端の贅沢な素材だったのでしょう。



シャッターのオーバーホールで注油などする際にはほとんどの機構が収納されている表側だけで仕事が済みますが
今度は絞り羽根の交換ですからめったに開かない裏側からの攻撃になります。
右側に組み込み済みの絞り羽根、左側がシャッター羽根が組み込まれています。
35mmカメラの絞り羽根は枚数が少ないのですが狭いところでの組み付け、
それに対してこの絞りは羽根の枚数が12枚ですがサイズが大きいだけに作業はこちらのほうが楽です。




このレンズを手軽に使って試写をしてみたいとスーパースピグラを組み合わせることにしました。
焦点距離(テレタイプではない)が長いので
レール最前端ぎりぎりで収まります。
すでにレンズとシャッター周りは完全に塗装整備をしてぴかぴかです。



折角なのでスーパースピグラの特長を生かして
距離計連動にしようと考えました。
スーパースピグラには専用レンズごとに距離計カムが用意されていますが、
このテッサーには当然それがありません。
そこで写真左側の127mm用のカムを参考に製作しますが中央の物は工作の途中で
左側の緩やかなカーブを削りすぎて没となり、2度目のチャレンジ、右側のカムが今回の完成品です。
左の標準レンズ用に比べると非常に勾配が少ないのがお分かりと思いますがごくわずかなタンジェントカーブなのです。

非常に微妙な行程で削っては切粉やほこりをふき取り、本体に取り付けては計測を繰り返しの連続です。
目の細かいダイヤモンドヤスリと2000番のサンドペーパでの作業です。

もともとスーパースピグラの距離計連動ストロークが構造的に限られていますので(約30mm)
このレンズの最短連動距離は2,5m程になってしまいました。
それでも長焦点ですから普通の35mmカメラに標準レンズでの1m程度に近接したぐらいの寄りは可能です。
それより近いところを撮るにはピントグラスを使えばいいのです。


試写


相当以前に期限切れのネガフィルム ASA160で試写した柏葉アジサイ。
未開封ですとまだ使えますね、すでに数年前に開封された同じロットの物では色調が狂っていました。
今回のテストは距離計の誤差の調査が主目的ですので古いフィルムで我慢しましたが
このフィルムはテッサーの色特性も判る程度です。

花は盛りを過ぎていますので少し色あせています。
日没前です 
距離計でピント合わせしています。

f4.5 1/50

ネガカラーのフィルム現像は関西の友人師匠のご指導で最近やっと本調子が出てきたように思います。
自家調薬現像(主剤は師匠から賜った中国製 CD-4)
漂白現像の鉄キレートは農薬の流用(これも師匠から御下賜)、
助剤の氷酢酸を手持ちの都合でクエン酸に置き換え中  (^^♪
といった具合に師匠のご指導を傍若無人に無視して好き勝手・・・アマチュアだもんねぇ。



ピントをあわせた部分の部分拡大。距離カムの精度はバッチリです!
色合いも非常にナチュラルだと自画自賛中。


撮影条件はアジサイと同じ−少し露光ミス。
距離計で最短にあわせられる距離の限界です。ピントグラスでしたらどんどん近接可能です。

これで人物を撮ってみたいモノです。



ヒ・ミ・ツの小部屋

設計から製作運転まで自作の蒸気機関車、石炭を焚いて走行した晴れの時から幾星霜。
今は主に先立たれて静かに時の流れに身を任せています。

ハーレーダビッドソンはご子息の愛車。
PLUS-X pan FILM D76
f:50  8sec (絞り値は旧規格)
メーターの円形ガラスまでが距離計連動範囲の最短2.2m

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