Voigtlander SUPARBを整備


Brillantを使ってみたついでに長いこと使っていないスパーブを引っ張り出してみたら絞り羽根に油が回ってピンが脱落していました。
この写真機はどこもかしこも変則的というか変っていまして、多分ローライの2眼レフに対抗して工夫を施しています。
一番の特徴はファインダーパララックス補正機能があり、しかもその機構というのがパララックスが増大する近距離側になるに
連れてビューレンズが下を向き始めるという驚くべき機構を内蔵しています。
ビューとテイクレンズは直径差のあるギヤーで連結されておりテイクレンズは直進ヘリコイド、ビューレンズ側は旋回しながら前後しますが
近距離側になると鏡胴が頭を下げる仕掛けになっています。
距離指針は真上から読み取れますがついでにコンパーシャッターの速度指標も同じく上から眺められるように
3角プリズムで光路を直角に折り曲げていますがミラーで折り返すので文字は左右反転します。
そこでコンパーの正面から見ると文字数字が左右反転彫りとなっています。
絞りの値も真上から直視できるようにボデーに絞りダイヤルを独立させ歯車機構を通してシャッターメカニズムと連結しています。
しかもフィルムは一般の2眼レフで常識の縦送りに逆らって横送りとしています。
そこでフィルム装填部は全面ボードを中心に左に1枚、右にL型の蓋1枚が開く構造です。

レンズは定評のあるヘリヤーです。

普通ですとシャッターブロックを取り外すのに裏側のフィルム室からシャッター留めリングを外してポロリとなるところですが
このカメラのフィルム室からは侵入不可能でヘリコイド側を外さないとシャッターが外せません。
シャッターのトラブルですと前面を外せば対応可能ですが今回は絞り羽根なので後ろから攻めることになります。



距離リングレバー


取り外すと中央の隠しネジがヘリコイド角度規制ネジなので外します。
今回バカネジになっていたのでなかなか取れず瞬間接着剤でネジと接着して取り外し成功。


最短距離を通り過ぎて距離リングレバーが真横になった位置でシャッターユニットを
少し左回しにするとヘリコイドネジが外れます。
シャッターユニットを外して右側に180度反転したところです。
歯車が見えるのは絞り調整機構。


外れたシャッターユニットの後玉部分は肉薄ですので100円ショップで300円を投資したリングプラー
(正式名前は知りませんが缶の蓋を緩めたりする優れもの)で後玉外し。
周辺の3本のネジで絞り機構とシャッターが分離します。


いきなり絞りとシャッター羽根の部分が出てきます。


上の写真右側の絞りユニットを反転したところ。
右下2箇所の羽根ピンが脱調していますので分解洗浄。


10枚羽根です、ここまで来たらばらして洗浄。


ついでにシャッター羽根3枚も洗浄します。


裏から再組み立てするとこのように筒の外周に突っ張っていたバネが3本(写真では2本)はみ出しますので
仮組みをして、今度はシャッター側から正攻法で収めてやります。


ビューレンズ部分は外ネジ内ネジが薄いリングに切り込んであってレンズ前後進のヘリコイドネジと
パララックス補正機構のネジが絡み合っています。
距離ヘリコイドは直進なのですがその外周がさらに旋回して鏡胴が頭を下げる仕掛け。

これらの再組み立ては想像するのもおぞましい手順でありました、
何度も失敗を繰り返しながらやっと悪夢から覚めた感じで何とか再組み立てに成功。
1 テイクレンズの組み付けには距離リングのタブ位置を正面からみて9時を通り過ぎて10時ぐらいの位置にして
  シャッターユニットを正立位置から30度右に傾けた位置でヘリコイドガイドとゆすり合わせながら距離リングを9時の位置で
  ヘリコイドネジとかみ合わせる。
2 その際絞りリングは開放にしておき絞り調整リング(ボデー側)もf:3.5に設定しておく)
3 ビューリングについてはさらにややこしい約束事が出てきますし、テイクレンズ側のヘリコイド位置とも関連します。
  とても文章に表せないというか煩雑で説明能力がありません。

レンズボードを外すのはよほどの根気と暇がないとさわるべからずの機構であるといえると思います。
ただしシャッター不調は普通のコンパーシャッターを正面から攻めるのですから何と云う事はありません。




フィルム交換のために裏蓋を空けます。
大げさですが鋳物ですのでしっかりしています。


シャッター速度は鏡文字で小さな3角プリズムで反射して上から数値を読みます(写真では右側が上)。


ピントルーペの右上の白い丸は何でしょう・・・水準器!


どんどん進化したローライフレックスf2.8と並べて呉越同舟。


距離などの確認試写

無限大 OK


距離最短 0.8m、f:5.6


これは開放 f:3.5


f:8だったか?(11だったかもしれない)


f:8で金ダライ。

END
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