セミパールのオーバーホール(コニシロク


関東の友人から送付されてきたセミパールです。
しっかりしている純正皮ケースに入ってきましたが、絞り羽根が2枚ほど脱落しているほかは見たところ蛇腹もしっかりしているようです。
で・・・恐る恐る送付者殿に

> **さん おはようございます。
>
> 本日、セミパールが到着いたしました。
> 特に蛇腹も傷んでいないように見受けます。
> 絞り羽根が1枚不具合の様でもありますが・・・???

そうなんですか。研究材料?ですから、気になるところは
どこを触っても大丈夫です。


ということは最大限に信奉する小西六のカメラ、しかもセミパールが転がり込んだか?
僕にとっては少年時代にパールIIIを触っていたのでなにが何でもコニシロクのカメラは最高のカメラなのであります。

で、先ず調べてみると1938年に生産開始、戦時中は一度生産を中断するも戦後もまたしばらく生産されたとあります。
よしっ、この機体は1939年製造と決めよう。なぜならばオイラと同じ年の生まれだっ!。
と勝手な想像を掻き立てましたが、屁理屈ながら多少根拠がないわけではありません、
先ず皮ケースや蛇腹がしっかりしている。コレは戦前モデル、しかも初期バージョンに違いない。
レンズNoが60690、これは・・・あれぇ少し数字が大きいぞ?
そしてボデーのトリムラインが黒かぁ、戦前のは銀色エナメル(一部戦前後期バージョンで黒の塗装もあるらしい)、アレッ???
じゃぁ、戦後バージョンかぁ。

追記
 後で判ったのですが革ケースにMADE IN OCCUPIED JAPANの刻印がを見つけました。
本体には何も記入がありませんがおそらく本体と皮ケースは入れ替わっていないものと感じます、
したがって、この機体は戦後まもなく生産されたものですね。

まぁ折角レストアするので、縁あって到着したコニシロクさんへの思い入れ話はそのくらいにします。


程度は、なかなかしっかりしています。
レンズは全群ヘリコイドですから当時のツァイスよりもエライのであります。



一番厄介な絞り羽根の脱落。
これが意外と再組み立てが面倒で、僕は一番苦手な仕事ですが何とかしてみよう。



絞り指標は横のネジを緩めますとすぐに取れます(ネジを外してしまうとあとが面倒)。
周辺の3本のネジを外すとシャッター部と分離します。
9枚羽根ですが絞り羽根のピン位置が右側上下スリット2箇所で外れていますね。
絞り羽根にピンが立っているのではなく片側から穴をつき抜かしてバリを作りこれがピン代わりです。
ですから羽根油で軽く動かなくなるとバリが潰れて脱落してしまうのですね。
何とか僅かなバリを再度立て直して見ましたがずれっぱなしで動かし続けたようでバリがなくなっている部分もあります。



いくつかの羽根は既にバリが潰れてしまったような状態なので一計を案じて爪楊枝でピンを作りました。
低粘度の瞬間接着剤を付けて爪楊枝を差込み・先端をニッパーで切断・後ろ側は付け根で切断してヤスリで平らに仕上げます。



やっと潰れたピン(バリ)を修正して羽根を整列!
これからそーっと左側の蓋をします。
特製爪楊枝のピンは裏側になっている部分に9本植えてあります。



これで一応円形絞りになってくれました。



シャッター部も洗浄、給油します。
ベンジンで洗い、そのあとでベンジンに1/100ぐらいのつもりでオイルを垂らした希釈オイルを可動部分に注油します。
したがって99/100のベンジンは揮発して、微量の極うすいオイルの幕が残ることになります。
これで貴方はシャッター給油の名人になれるわけです。


そのほかに組み立ててピントを確認すると1mmほどもピント位置がズレています。
シャッターの座に1mmのシムを入れるとネジの懐が浅くてネジが効かない!
シャッターマウント部とヘリコイド部を2段に組みつけているのでヘリコイド部も外してみると1mmのアルミリングがありました。
このアルミリングを蛇腹の裏側のナット部に組み込んでいるのを発見しました。
ははぁ、以前誰かが修理したときにこのリングの組み付け場所を間違っていたようです。
それでピントが合わない(ヘリコイドを無限大にしたときやっと5mほどのところにピントが来ます)のでジャンク扱いにされたのかな?
リングの位置移動でピントは正常に戻りました。


もうひとつ、前蓋のストップ金具が壊れていて爪金具を作ってあったのがまたもや千切れましたので
今度は少し頑丈な真鍮板で加工してみましたがこれで当分と云うか、もう大丈夫でしょう。
下に小さな新しい真鍮金具が見えますね、後で黒く塗装します。

レンズはHexiar f:4,5 7,5cmで、シャッターはDuraxT/B/1〜100
関東のSI○○○さん、これで後は試写を待つばかりとなりました。

END

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