Voigtlander Prominent(35mm)の修理
先輩からプロミネント(35)<最初のプロミネントは69サイズのものですからこれはフォクトレンダー・プロミネント2とでも云うのでしょうか。
この会社は自社の最高級機種にこのプロミネントと言う言葉を使いたかったのでしょうね>の修理を頼まれました。
シャッター羽根油の状態でしたのでシャッター洗浄と羽根油の除去で快調になりました。
さて、修理に際して何か部品交換が必要かもしれないので、もう1台不動のボデーを同封しますと言って付いてきた献体は「もう不要です」とのお言葉でありがたく頂戴することにしました。
先輩に修理してお返ししたカメラの試写は
http://mutohide.ddo.jp/etccam/prominent.html
に記載していますがノクトンの味はなかなか気に入りました。
頂いた機体は完全に動かない状態でしたのでまずはシャッター周りの調整から始めます。
レンズマウントの中心のリングを緩めて外すとバヨネットマウントごとコンパーシャッターが出てきます。
シャッターユニットはコンパーなのですがレンズ交換をする機構のために2重シャッターにして光線漏れを防止しています。
つまり設定秒時で動作する5枚羽根と、もうひとつ後ろにレリーズをすると開く5枚羽根ガあるのです。
スローガバナーが不調で分解洗浄、このブロックの固定が悪く噛み合いが悪かったので調整してOKとなりました。
その他、セルフタイマーも給油で正常に戻りました。
2重の羽根油が物凄いのでベンジンで何度も洗浄して正しく動くようになりました。
ついでに、霞みがちなファインダーを開いて見ますとプリズムブロックを多用した素晴らしい光学系です。
すべての表面をクリーニング液とティッシュペーパーで汚れ落としして、仕上げにマイクロファイバークロスで拭き取ったらきれいになりました。
ヘリコイドの前後は巻き戻し軸の外周を回して行いますがここのグリスは完全に固形石鹸の状態でしたので拭き取ってグリスUPしました。
このあたりの機構はさすがフォクトレンダーとうなるような精密加工です。
バルナックの簡潔さとは逆のコンタックスの精度とどこのメーカーもやらない機構で固まっています。
1 左のリング類の1番上にあるリングを緩めるとバヨネットマウントフランジとシャッター速度リングが外れます。
あとはお決まりのロックプレートを外してシャッターのメインテナンスが出来ます。
2 一番左がヘリコイドを動かすリングでグリスが固まっています。
ここからすこし見える斜めのアームからボデーの中に入り3度折れ曲がってシャッターユニットごと前後させる機構です。
そして直角ではなく斜めに移動しながら一切の歯車を使わずてこで連結されているのです。
カムの傾斜と2個のてこ3度の変換をして前板を動かす機構にはまさに敬服と言う言葉しかありません。
ハーフミラーなどの部分もすべてプリズムブロックで構成されていますので壊れない限り劣化のチャンスは少ないですね。
3 軍艦のアクセサリーシューと化粧パネルを外すと左右上下の矢印で示される調整穴が見えます。
これで距離計の微調整が出来る仕掛けです。
4 裏蓋の革は綺麗でしたが左右の皮は傷んでいました。
5 本革を貼って ばっちり精悍な表情のプロミネント。
実は・・・レンズがありません。
生産数も少なかったと思われるプロミネントですからレンズを入手するのも難しそうです。
また、おそらく高価な金額での取引となるでしょうから思い切って何か別のレンズを見繕って見ようかとノギスを持って保管庫の中をかき回し始めたところです。
END
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