Mihama MODEL-II


友人から依頼を受けた Mihama Model-IIの整備です。
つい最近もこの手の同時代のシックス版カメラの整備をしてあげたことがありますが、
その症状が同じで前玉回転式距離合わせヘリコイドネジの固着でしたので報告します。

この手のカメラは3群または3枚玉の最前列凸レンズのみを移動させることにより僅か2mmほどの移動で
1m〜無限大までの調整が出来ると言うものです。

75mmのレンズで全群を移動させると6〜8mmほど前後させないといけないので良く使われる手法ですね。
小西六のセミパールなどはレンズ性能低下することを嫌って全群移動させますが前玉回転式は広く採用されています。

この距離ヘリコイドが固着すると00番シャッターの規格固定ネジのところが緩んで前玉と中玉(凹レンズ)が同時に移動しますので
感覚的にはヘリコイドが動いているように勘違いして「あ、このレンズはおかしい」となってジャンク品にされてしまうのですね。


RF機と見まがう2つの窓は実はセミ版と、スクエア版とののぞき窓でして目測機なのであります。


前玉をシャッターから外したものです、3Feetの目盛りの横、ローレットのところに小さなイモネジが見えますね。
これを3個少し緩めます(1回転以内程度)外してしまうと紛失する恐れがあります。


前玉のリングを外すと、今ドライバーで指しているところがヘリコイドの前後開く部分です。
左に見えているネジはシャッターへの固定ネジなのです。


今回のネジ固着は物凄く頑固でCRC,ベンジン、ミシン油をすべて撥ね付けました。
普段ですと薬研ブロックを装着したテーブルバイスで掴んで廻せるのですが全く動かないのであります。
そこでご覧のとおり旋盤のチャックに掴んで万全を期したのですがそれでも駄目。
そこで超音波洗浄機に灯油を満たし15分間(3分で自動停止するので5回)浸透させて、それでも力任せでやっと緩んでくれました。

真鍮の中の銅とグリスが仲良くなってまるで青銅のような緑青を吹いていました。名付けて「緑青石鹸」ですね。

注記事項
実はこのグリスについて興味深いお話をお聞きしました。
私はてっきり鉱物油とばかり思って対処してきたのでありますがこの時代には石油石炭の産物は復興時期の重要産物
であったと考えられなくはありませんね、仲間の方から「マジックリンで溶けたよ」とのご報告がありました。
つまり、植物油の可能性が大であると言うことです。
そういえばあの頃の整髪剤は「ポマード」でしたね、カメラ工房の多くが「四畳半工房」と言われた時代ですからて直に入手できる
植物油脂製のグリスを使っていたとしても不思議はありませんね。
鉱物質溶媒を使ってもなかなか頑固な原因がわかったような気がしませんか?

どうしても溶解しないなら水を使う、それもマジックリンが最適!!とのお話。
私は未だ次の試験材料が手元にありませんので是非お試しくださいませ。
2005/03/09 追記



中玉をシャッターにしっかりと固定したら次に新しくグリスを塗った前玉を装着して距離リングを固定すれば仕上がりです。


ついでに、裏の赤窓に細工をしました。
裏蓋赤窓周辺に毛糸状のモール(毛糸でも良い)をぐるりと接着します。
そして圧板にはそれより大きな輪郭でモールを一周させます。
こうして組み付けると赤窓から侵入した光は2重のモールでさえぎられ、しかも圧版の圧力が変わることも無く
光線漏れを防止すると言う試みです。


早速の試写

ピントあわせがうまく行ったかどうかの試験が主ですので家の庭をぐるりと一渡り。


∞でf:11


10m先にピントを合わせてf:8


80cmはなれて(ヘリコイドストップ位置)。f:3.5開放


f:5.6


捨てるに捨てられない、頂きものの縁起物 f:4.5


開放f:3.5 80cm
フレアーがでているのは距離が外れているからか?

END
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