PLAUBEL makina67分解整備
2015/02/04


親しくおつきあいしている写真家さんが愛用されていたプラウベルマキナ67を頂戴しました。
このカメラには一入の思い入れがあります。
このカメラを開発、指揮したのは「カメラのドイ」の創業者土居君雄さんで私が青二才の丁稚奉公をしていた時代の私の親方の友人だったのです。
カメラのドイ本店の近くが私の勤務先でしたので時々颯爽とメッサーシュミットに乗って遊びに見えていたのです(半世紀以上前の話)。

さて、このマキナ67は以前にファインダーの2重像が見辛くなったので何とかならないかという事でお預かりして
当時とんでもない高級機材でしかもどうやって開くのか?
妙なネジ2個を開けると傷もつきそうだし・・・
仕方なく対物レンズの明るさに比べてかなり薄くなっている距離計側の明るさに合わせて
対物レンズに表からフィルターを掛けたのでした、当然見栄えは悪いものでした。


このカメラに携わっていた方が八王子市でメンテナンスを引き受けてくださっているとのことでした。
今回その点を確かめて見ましたら資材が尽きたのか歳を召されたか、2011年に店を畳まれたようです。

もうこの名器の整備をできないのかと思うと何ともやるせない気になりました。
では自分が開いてみよう、不具合な距離計の表面鏡が傷んだのであれば何とかなるのではないか・・・
と云う訳で底蓋にある小さなネジを開くドライバーを作ることにしましたs。


(1)  これが底蓋三脚座の両脇に位置する留めネジです。
ピンセットなどで弄ると傷がつきそうなので傷をつけずにピタリと合うドライバーを作らねばなりません。




(2) 4oの銅パイプ、肉厚は0.5oをフライスと鑢で加工してみたら大正解でした。
これだと材質が柔らかいので大切なカメラに傷がつきにくい。
生産していた当時もこのようなもので作ってあったのではないかと思いました。




(3) 実は解体の手順を誤っていました。
巻き上げレバー周辺は何も触らないでいいのでした。
写真では巻き上げレバー周りの距離表示とそれの指標が取り払われていますがこの辺りは何も触らないでいいのです。
特殊な頭をした小ネジ2本と左右ストラップのフックとアクセサリーシュー(シューは緩めるだけでいいかもしれませんね)を外せば抜ける。
あ!底蓋にあるフィルム固定取り外しの軸心エンドはフィルム室側のマイナスネジを緩めて取り外します。

名器と謳われるものの見事さ、簡潔さに将に美学を感じます、驚きを禁じ得ません。

なお、ストラップ金具は裏蓋を開くと該当する位置に1.8oの長いビスでくさびを打込んだようにして止めてあります。
あとはカバーを手前に引張るだけ、全部引き抜くにはレンズ周りのシャッターと絞りのノッチを外せばいいのですが今回は外していません。




(4) 開かなくてもよかった距離計周り。



(5) サインが入っていました、昭和54年8月18日か?お盆あけて直ぐですね。
既にポリイミド基板が使われています。



(6) 一番上にΩの形をひっくり返した調整用ポテンショメータが3個あります。
露出計の感度調整用半固定ボリュームですね。
ピンセットでつまんだ場所にはトランジスタ、青い3個のタンタルコンデンサーの下には8本足のウインドウコンパレータ用と思われるICがあります。
万一露出計は壊れても単体露出計を使えばコト足りますね。



(7) ファインダーの対策をしようと開いたのですが・・・
高級な3角プリズムブロックに銀鏡蒸着をしてバルサムで貼りあわせた密閉型でした。
万事休す、これは正常なものと交換するしかしょうがないようです。




(8) 右上から右斜め下に筋が見えるのですがこの中に気の抜けたハーフミラーが密封されています。
写真の下側が対物面でさらに対物凸レンズが貼ってあります。




(9) パララックス補正ウインドウ
右側に斜めにハーフミラー部の様子が少し見えていますね。
左端の方に痘痕のように見えるのがミラーの劣化のしるしではないでしょうか。




(10) 測距窓の中の表面鏡は奇麗でした。
これが傷んでいれば対策出来たのですが残念です。




(11)巻き上げレバー周りのダイヤルは距離設定ダイヤルとなります。
ギヤ機構の最上階はフィルムカウンター関係、次の階は巻き上げ、シャッターチャージ機構部ですね。
レンズ部のシャッターチャージは上側のタスキ金具の下にくの字に曲がって伸縮する部材が見えますか
この中をワイヤーが走って巻き上げ操作でチャージするように作られています。
将に土居さんの美学でだと思います。
一番下の階に距離系の連携ギヤ部があり、レンズ部上と下のラックをピニオンギヤで同時左右に動かして
タスキ金具を連動距離設定、それらがすべて苦も無く折りたたまれる、見事な設計ですね。




感心してばかりはいられません右上のファインダーの窓をご覧ください。
以前、写真家さんに応急処置で対物レンズ側にハーフミラーを使ったフィルターを外付けして差し上げていたのです。
やはりあまり見栄えのいいものではありませんね。




(8) の対物レンズと全面カバーガラスの間に僅かに隙間がありましたので
ハーフミラー製のNDフィルター(0,5mm厚)を内装にしてみました。





フィルターは0.5mmと薄いのですが対物レンズとカバーガラスの空間も0,5mm有るか無しか
フィルターが僅かん位湾曲したようにも見えます。
オリジナルの状態では暗い窓だったのがミラーサングラスになりました。




ファインダーは暗くなっていますが明瞭度は高く2重像の識別も上手く行きます。
中央のドアロック辺り、わざと距離をずらしています。
実際にはブライトフレームが全部と右側の露出計の表示が見えます。
露出計はボタンを押すと絞りとシャッタに連動して右側に見えます。
+ ○ ―    ○はグリーン、±は赤です。



コンパクトデジカメのピント合わせに失敗したらハーフミラー部のアバタにぴったりとピントが合いました。
肉眼では観測できません。




完成! 蛇腹収納時のポートレイト



稼動状態。

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