EHIRA SIX(Weha Chrome Six)の復元


1937年に発売され1941年ごろまでI・II.・III型と進化していったウエハークロームシックスの最後のほうでEHIRAが誕生したようです。
命名が変わったいきさつは今のところ資料を見つけきれていません。
同じ時期にマミヤシックスの初代版が発売されているようです。

私の手元に来てから約半年、シャッターはコンパーを範とした純国産シャッターでT/B・1〜最高速度1/400迄ある当時最新の性能ですが
残念ながら素材の品質が悪い上に工作精度も未熟で欠品もあり完全に壊れていました。

この希少な珍品を一目瞭然改造品的な形に改造してしまうのは惜しい、
しかしこのレンズを通してもう一度フィルムに映像を刻んでやりたい。

単速でもいいから動かそうと試みたのですが欠品もあり、シャッター羽根がすでに変形しているので
完全な遮光は不可能と判り、思い切って旧コンパーシャッターと換装することに決心しました。

極力原形を保ちながら換装しなければなりませんがオリジナルシャッターのレリーズは
鏡胴の中を走ってボデーレリーズしています。
これを再現するにはコンパーシャッターの内部を大改造しなければならないのですが僕のスキルは不足します。
ここは諦めてシャッター直接レリーズで我慢します。
それと、手元のコンパーシャッターは最高速度1/250です。
同じサイズで1/400のもあるのですが、いま手元にあるもので我慢します。


シャッター速度目盛りにコンパーシャッターの速度リングをそのまま使っています。
せっかくのCHROMEメッキがここだけニッケルか洋銀の少し黄色みを帯びたメッキになってしまいました。
また、ボデーレリーズは単なるお飾りと云うことです。
距離計の下のほうに見えるシャッターレバーでレリーズします。
シャッターのコッキングは赤いペイントがチャージの目印ですがオリジナルも赤いペイントが特徴です。
シャッターを切ると距離計のアームの陰に完全に隠れます。



右半分がオリジナルパーツ
左はドナーのコンパーとオリジナルのGOJOレンズ。
コンパーの黒い前面ベゼルは使用しません、代わりに距離計アームを移植します。
また絞り指針は裏面で切断しCHROME SIXの絞りリングと連携させます。


これがK.S.Kシャッター



コンパーシャッターと入れ替えますがシャッターの前蓋に相当するところに距離計のアームを挿入します。
コンパーオリジナルは中心リングの外側に細いスリットが左に走っていますが
距離計腕木を左回しに固定しなければならないので右側に向かって糸のこで3本のミゾを掘りこみます。
いまシャッターの外周はコンパーの黒いローレット加工で歴然としていますが
ここの周りにはオリジナルの化粧リングを付けて完全に見えなくできます。
コンパーシャッターのほうが直径で1mmはど小さかったので0,5mmのシムを差しこんでうまい具合に収まりました。



シャッターの前板代りに距離計アームが固定されます。
回転止めに上部にある2個のねじで留められた真鍮小片は写真ではオリジナルですが
ガタが多すぎるので別の金具に作り替えました。
このカメラの距離系部分はレンズ外周のリングで固定されているだけなので
ともすると大きな応力のかかるアームへのストレスを受け止めるのに無理がある設計でしたね。
まさに弁慶の泣き所。



前玉回転は330度程度になり、前後のガタで偏心カムと上に伸びているクランクが外れる場合があります。
そこで偏心カムリングをピアノ線で規制します。
右に傾いて縦に走るピアノ線を装着しました。



距離計の仕組みです。
ドレーカイルではなく編芯楔とでも云いますか後ろに固定した凹レンズと
左右にスイングする凸レンズの組み合わせ度数がプラスマイナス同じなのでスイングすると等倍のまま
光路の位相がずれる仕掛けです。
スイングするレンズは本当は円の中に収まります(撮影のために左に引っ張り出しています)


軍艦部はいたってシンプルです。
2重像の上下と左右の微調整機能があるだけで可動部分はありません。
等倍のファインダーはグレーでミラーも埃を取り除いたらきれいになりました。
ハーフミラーも70年近く何事もなかったかのようです。

ボデーの断面は12角で握り具合も良くいいデザインだと思います。

また、フィルムの脱着も底蓋に90度ひねって飛び出すストップ軸があって優れものです。

裏蓋の赤窓も茶筒式に裏蓋と圧板にスラスト筒が組み込んであるので光線漏れの心配は皆無です。



面白いものを発見しました。
アイピース部分は非常に小さいのですがこの直径7mmほどの筒の中に逆ガリレオ構成の2枚のレンズが組み込んであります。
これで視度調整をしていたのですね、わずかにマイナスにしてありましたが現代人の私たちは
快適なメガネで視度調整はしていますので、ここは不要かと素通しにしましたのでまたまた明るくなりました。



レンズは K.O.L Gojo
K.O.Lは 上代光学研究所, Kajiro Optical Laboratory
Gojoはそこの社員?五城氏、1941年には上代光学研究所から五城光機製作所になっています。
そしてその年戦争勃発となり戦時中は生産活動を中止する運命でした。
Gojoのレンズは1941年のほんの数か月だけ装着されたのかもしれません。
戦後残った部品でまた少し作られたようですから、もしかするとこれは戦後のものかもしれませんね。



完成-沈胴時



完成-鏡胴引出し時


とりあえずの試写


開放3.5で1/10



f:11

END

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